松尾聰

松尾聰の生涯と業績

松尾聰（まつお さとし、1907年9月28日 - 1997年2月5日）は、日本の著名な日本文学者であり、特に平安時代の文学研究に貢献した。文学博士号を東京大学で取得し、その後学習院大学の名誉教授として教育と研究の分野で活躍した。彼の経歴と業績は、日本文学における重要な研究の一環を成している。

生い立ちと教育の経歴

松尾聰は東京市赤坂区青山に生まれ、1920年には東京市立青山尋常小学校を卒業し、その後東京府立第一中学校を経て、1928年に第一高等学校を卒業した。1931年には東京帝国大学文学部国文学科を卒業し、さらには同大学院を修了した。卒業論文では『浜松中納言物語』の研究を行い、欠落していた巻を発見して翻刻校訂を行った。

この研究を基に、平安時代の散佚物語に関する研究へと進んでいき、松尾は『風葉和歌集』や『無名草子』などの資料を用いて合計46編の物語の復原を試みた。また、『源氏物語』や『枕草子』に関する注釈を手がけるなど、中古語に関する論考も発表した。

研究と教育への貢献

戦後、松尾聰は学習院大学において国文科の創設に貢献し、多くの著名な学者たちを招聘した。また、学術団体や文献研究機関の設立にも寄与しており、全国大学国語国文学会や国文学研究資料館の創設に力を注いだ。彼の影響は学術界にとどまらず、後進の指導にも及んでおり、多くの学生たちに多様な文学の解釈を教えてきた。

戦時中の生活と家族

太平洋戦争中、松尾は妻の八洲子を茨城県に疎開させ、自身は新宿区の職員寮や教育疎開先の蔵王温泉で過ごしていた。疎開期間中の書簡のやりとりは、松尾光によって編集され『疎開・空襲・愛』として刊行されている。このような状況の中でも、松尾は文学を支える活動を続け、彼の文学に対する情熱は一貫して変わらなかった。

三島由紀夫との関わり

松尾は学習院高等科の教員として、後に著名な作家となる三島由紀夫の教え子でもあった。三島は松尾を「教えがいのある生徒」として回想し、松尾も三島の才能を高く評価していた。松尾が三谷信に宛てた書簡の中で三島について言及し、三島の文学的活動を支持していたことが伺える。また、松尾の研究論文を基にして三島が短編小説「朝倉」を執筆したこともある。

著作と研究業績

松尾聰の著作には、多くの単著と共著がある。特に『古文解釈のための国文法入門』や『平安時代物語の研究』などがその代表作であり、彼の知見が広く一般に共有された。また、学術的な観点からの文献校注や注釈も多数手がけており、これらが日本古典文学の重要な資料となっている。

• - 著作の一部:

- 『古文解釈のための国文法入門』
- 『平安時代物語の研究』
- 『源氏物語入門』
- 『平安時代散佚物語論考』

最後に

松尾聰は1997年に胆嚢癌のため89歳で亡くなった。彼の生涯を通じての活動と業績は、今なお日本の文学研究において重要な位置を占めている。彼の残した知見は多くの後進によって継承され、現在の日本文学においても大きな影響を与え続けている。

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