松居直

松居直（まつい ただし）について

松居直（1926年10月5日 - 2022年11月2日）は、日本の編集者、出版事業家、そして児童文学者として知られる人物です。生まれは京都府京都市で、近江商人の家系に育ちました。彼は幼少期から日本の伝統美術に親しんでおり、著名な画家たちの作品に触れる環境の中で成長しました。特に、須田国太郎という叔父の影響を大きく受け、彼のアトリエに入り浸ることで、美術や文学に対する興味が一層深まりました。

学生時代と福音館書店の設立

同志社[[大学]]法学部を卒業する直前、松居は自宅に下宿していた佐藤身紀子と恋仲になり、身紀子の父が経営する福音館書店で編集者としての道を歩み始めます。後に彼女は松居の妻となります。福音館書店では、彼が手掛けた「福音館小辞典文庫」シリーズが高い評価を受け、その成功を受けて1952年2月には本格的に福音館書店を設立しました。松居は編集長として、『母の友』や『こどものとも』といった月刊誌を創刊し、児童文学の分野において大きな足跡を残しました。

才能の発掘と発展

松居は自らの美術的素養を活かし、当時あまり知られていなかった才能ある作家や画家を発掘しました。赤羽末吉、いわさきちひろ、田島征三など、多くのアーティストの作品が松居の支援のもとで世に出ることになりました。また、彼は児童書においても当時の一流の画家たちを起用し、子どもたちが心豊かに育つための環境を整えました。

高い編集手腕を持つ松居は、作家に対しても独自のアプローチで接しました。売れない作家に対して原稿の没を通しながら、新たな視点を与え、名作の創作へと促すこともありました。特に寺村輝夫の作品を発掘し、彼の潜在能力を引き出したことが後のヒット作『ぼくは王さま』を生む要因となりました。また、ディック・ブルーナの「ミッフィー」を日本ではじめて紹介したのも松居の功績です。

福音館書店の発展

1968年、松居は福音館書店の社長に就任し、その後も児童文学の普及に尽力しました。彼は大学で講師としても活動し、多くの学生に児童文学や絵本についての教育を施しました。1997年に会長職を退任するまで、松居は児童文学研究者としての著作を発表し続け、教壇でも活躍しました。

受賞歴と影響

松居はその功績により、多くの賞を受賞しています。彼が手掛けた作品や活動に対する評価は高く、産経児童出版文化賞やモービル児童文化賞など、児童文学の分野で数々の栄誉を受けました。また、彼は「子どもの本・九条の会」の代表団員を務めるなど、児童文学界への貢献が認められています。

家族と晩年

彼の家族も多彩な活動を行っており、長男は児童文学者として、次男は尺八奏者として活躍しています。また、長女も絵本作家として著作を発表しています。松居は2022年11月2日に96歳で亡くなった際、長年の業績が多くの人々から惜しまれました。彼の残した作品・教育・影響は今もなお、児童文学の世界に生き続けています。

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