松山省三

松山省三の生涯と業績

松山省三（まつやま しょうぞう、1884年9月8日生まれ – 1970年2月2日没）は、日本の洋画家であり、特に「カフェー・プランタン」の創業者として知られています。広島県広島市に生まれた松山は、渡辺又三郎の三男として育ちました。彼は日本中学校を卒業後、東京美術学校（現在の東京芸術大学）西洋画専攻に入学し、1907年に卒業しました。この時、彼はまだ「渡辺」という姓でしたが、その後、養子となることで松山姓に改めます。

彼は家族と共に上京し、画家としての道を選ぶことになります。当時、妊娠7ヶ月だった妻・英子は、上京した直後に長男を出産します。この長男は後に歌舞伎役者の河原崎国太郎として知られることとなります。1909年11月、松山は自由劇場で背景画を担当し、美術への情熱を更に燃やしていきました。

松山の画業には、白馬会の岡田三郎助からの指導が大きな影響を与えました。彼はパリへの留学を夢見ていましたが、義父が小豆相場での失敗により、その夢は断念せざるを得ませんでした。しかし、親友で劇作家の小山内薫の勧めもあって、松山は自身の芸術に対するビジョンを実現しようと決心します。

1911年、彼は平岡権八郎と共に東京・京橋日吉町で「カフェー・プランタン」を開業します。このカフェーは、名の通りフランスのカフェの雰囲気を再現し、文人や画家たちが集まり芸術談義を楽しむ場所となりました。プランタンという名は、友人の小山内によって付けられ、「春」という意味を持っています。

プランタンは日本初の「カフェー」として、珈琲や洋酒、食事を提供する新しい形態の飲食店でした。その特徴的なスタイルとして、男性が給仕するフランスのカフェとは異なり、女性の給仕を採用しました。この斬新な営業形態は多くの人々を魅了し、森鷗外、永井荷風、谷崎潤一郎、岸田劉生など、当時の著名な文化人たちの常連店となりました。店内の壁は彼らの落書きで彩られ、一種の芸術空間が形成されました。

しかし、1923年に発生した関東大震災によって日吉町のプランタンは焼失し、一時的に牛込神楽坂に支店を開くことになります。この支店も文化人や学生に愛され、さらに新たなエピソードが生まれます。松山は麻雀に興味を持ち、当時流行していたルールを学ぶ為に仲間たちを呼び集め、カフェの2階で麻雀を始めたとされます。この手法によって、日本の麻雀文化の基礎が築かれたといわれています。

神楽坂のプランタンは、約2年営業した後、銀座通りの南金六町に移転しますが、1945年に建物疎開のために取り壊されました。第二次世界大戦後、松山は文春クラブの支配人として活躍し、長きにわたり日本の飲食文化に寄与しました。1970年2月2日、松山省三は85歳でその生涯を閉じ、調布市の明西寺に墓所が設けられました。

松山の家系には多くの著名人がおり、長男は歌舞伎俳優の河原崎国太郎であり、孫には俳優の松山英太郎らが名を連ねています。彼の父・渡辺又三郎は広島市長を務めた人物でもあり、松山家は歴史的にも重要な役割を果たしてきました。松山省三の業績は、日本の文化や飲食業の発展に多大な貢献をしたことを今なお語り継がれています。

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