松岡古墳群

松岡古墳群：越の国の王を偲ぶ古代の墓

福井県吉田郡永平寺町に位置する松岡古墳群は、九頭竜川の南側、福井平野東端の尾根上に展開する壮大な古墳群です。国の史跡に指定されている4基の前方後円墳と、それに付随する陪塚3基から成り、その規模と内容から、九頭竜川の水利権を掌握し、周辺地域を支配した古代豪族の墓と考えられています。彼らは「越の国の王」とも称されるべき大首長であった可能性が高いです。

松岡古墳群を構成する主要な古墳は以下の通りです。

1. 手繰ヶ城山古墳

松岡古墳群で最大規模を誇る前方後円墳で、全長は約129メートルに及びます。くびれ部付近には造出状の遺構があり、その先端には陪塚の方墳が位置しています。墳丘は2段築成で、河原石を用いた葺石が確認されています。墳頂部と中段平坦部には、円筒埴輪や朝顔形埴輪が配列されており、威容を誇っていた様子が偲ばれます。築造年代は4世紀中葉頃と推定されています。

2. 鳥越山古墳

全長53.7メートルの前方後円墳で、5世紀中葉頃の築造と推定されています。地山を削り出して築造されたもので、後円部頂上やくびれ部からは埴輪が出土しています。内部からは、舟形石棺直葬墓と竪穴系横穴式石室が発見され、石釧、砥石、馬具、鉄製品、土器などが出土しました。これらの遺物は、当時の埋葬文化や生活様式を理解する上で貴重な資料となっています。

3. 石舟山古墳

全長79.1メートルの前方後円墳で、2段築成されています。前方部先端には陪塚の方墳が付属しています。墳丘には埴輪が巡らされていたことが分かっています。残念ながら、盗掘被害を受けており、副葬品はほとんど残っていません。しかし、墳丘主軸に平行して置かれた舟形石棺の棺身の一部が残存しており、築造年代は5世紀中葉頃と推定されています。

4. 二本松山古墳

全長89メートルの前方後円墳で、2段築成されています。前方部の東側には陪塚が付属しています。5世紀後葉頃の築造と推定されています。明治時代に実施された調査では、舟形石棺とともに、銅鏡、冠、管玉、鉄剣、鉄刀、刀装具など豪華な副葬品が発見されています。これらの遺物は、当時の権力者の地位と権勢を示す重要な証拠となっています。墳丘外側からも埴輪が見つかっています。

上記の4基に加え、春日山古墳や乃木山古墳など、国の史跡に指定されていない古墳も近隣に存在します。これらの古墳を含め、松岡古墳群は、九頭竜川流域における古代社会の構造や歴史を解き明かす上で極めて重要な役割を担っています。九頭竜川を挟んで対岸には、同じく国史跡に指定されている六呂瀬山古墳群が分布しており、両古墳群を比較検討することで、古代豪族の勢力範囲や交流関係を考察することができ、今後の研究に期待が寄せられています。

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