造出

造出（つくりだし）とは

造出とは、古墳の墳丘に付随して設けられた、半円形または方形の壇状の施設を指します。「造出し」や「造り出し」とも表記され、主に古墳時代中期から後期にかけての大型前方後円墳に多く見られます。しかし、すべての大型古墳に存在するわけではなく、その有無の基準は明確ではありません。また、前方後円墳だけでなく、前方後方墳、円墳、方墳でも確認されていますが、そのほとんどが前方後円墳の事例です。

概要

造出は、古墳の墳形を問わず確認されていますが、特に大型の前方後円墳に多く見られます。しかし、大王級の古墳である宝来山古墳のように造出がない例もあれば、全長60メートル台の新庄二塚古墳のように造出のある例もあり、その有無の基準は明確にはなっていません。

造出の性格については、古くから様々な説が唱えられてきました。宮車の車輪模倣説、壺の耳環模倣説、殉死者のための埋葬場説などがありましたが、現在では祭祀を行うための場所とする説が広く支持されています。墳丘上で行われていた祭祀が、ある時期から造出で行われるようになったと考えられています。

成立過程

大和地域では、古墳時代の初期（1期から3期）の古墳において、墳丘の裾周りに方形の区画（プレ造出）を設け、祭祀が行われていた事例が確認されています。奈良県天理市の中山大塚古墳、燈籠山古墳、赤土山古墳では、後円部背後に壇状の施設が確認され、東殿塚古墳では、前方部左側の突出部で祭祀に使用されたと思われる土器群が見つかっています。また、行燈山古墳や渋谷向山古墳では、後円部右側のくびれ部付近に壇状の地形が確認されています。これらのことから、4世紀半ばごろまでのプレ造出は、設置位置が一定していなかったことがわかります。

佐紀盾列古墳群の大王級古墳では、佐紀陵山古墳の前方部両側面に方形の張り出しが確認され、これは造出が定式化する前の段階の施設とされています。続く佐紀石塚山古墳や五社神古墳では、前方部左側のくびれ部により近い位置に造出状の地形が確認され、造出の定式化がさらに進んだ状況を示しています。

そして、古市古墳群の津堂城山古墳をもって、くびれ部付近に造出を付設する一般的な平面形が確立したと考えられています。

目的と機能

造出は、納棺後の祭祀（追善供養）を行うための場所であったと考えられています。箸墓古墳では、後円部から時期の異なる2種類の特殊器台が出土しており、納棺後、ある程度の時間が経過してから再び祭祀が行われたと考えられます。その後、供養のためでも墳丘に登ることをタブー視する考えが広まった結果、追善祭祀の場は墳丘からプレ造出に移行しました。王墓が王宮のある大和から遠く離れた場所に造営されるようになると、大王本人に代わって勅使が追善祭祀を行うようになり、それに合わせて造出の整備・定式化が行われたと考えられています。

納棺儀礼終了後、一定期間が経過してから追善祭祀が造出で行われ、その期間が終わると、今度は形象埴輪を配置して祭祀の様子を再現し、造出を含めた墳丘への立ち入りはなくなったと考えられています。最終的にはそれが形骸化し、埴輪による祭祀の再現のみが行われるようになったとされています。

全国で約4600基あるとされる前方後円墳のうち、造出のあるものは約100基程度（その約半分は奈良・大阪の大型古墳）しか確認されておらず、その数や有無は被葬者の地位を反映していると考えられています。

造出に類似する施設

島状遺構

周濠内に独立して存在する、方形または円形の遺構です。墳丘とは接していない点で造出とは異なりますが、造出と同様に埴輪や土器が出土しています。津堂城山古墳、五色塚古墳、保渡田八幡塚古墳、井出二子山古墳、正法寺古墳などで確認されています。

出島状遺構

方形の島状遺構に、墳丘と接続する陸橋が付いた遺構です。広義には造出に含まれることもあります。三重県城之越遺跡や奈良県南里大東遺跡で確認された導水施設の構造に類似しており、水鳥形埴輪や船形埴輪、井戸形土製品など、水に関係する遺物が多数確認されていることから、水の祭祀が行われていたと考えられています。宝塚古墳1号墳、巣山古墳、湊茶臼山古墳などで確認されています。

周堤の突出部

周堤または中堤に接続する、造出状の施設です。「中堤造出」、「張出」、「別区」、「埴輪祭祀場」などの名称が用いられています。造出と同じ機能を持つ施設と考えられますが、より大規模なものが多いです。埼玉県や福岡県を中心に、10基程度確認されています。

参考文献

中井正幸「墳丘に付随する施設」『墳墓構造と葬送祭祀』、同成社、2011年11月
沼澤豊「前方後円墳と帆立貝古墳」、雄山閣、2006年11月

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