松岡巌鉄

松岡巌鉄：大相撲からプロレスへ、そして謎の引退

1938年、岡山県に生まれた松岡巌鉄は、波乱に満ちた人生を送った元大相撲力士にしてプロレスラーである。大相撲では間垣部屋に所属し、正剛山という四股名で活躍した。最高位は幕下33枚目。序二段、三段目と優勝するなど、才能を覗かせたものの、1962年には大相撲を引退した。

しかし、彼の格闘技人生はここで終わらなかった。同年、日本プロレスに入門。大相撲時代の四股名である正剛山をリングネームとしてプロレスラーデビューを果たす。その後、リングネームを松岡巌鉄に改名。

プロレスラーとしての経歴は、まさにジェットコースターのようなものだった。日本プロレスでは、1968年には国際プロレスのブッカー、グレート東郷襲撃事件に関与するなど、物議を醸すこともあった。1969年には渡米し、ミスター・オオタのリングネームで活躍。間垣部屋時代の仲間、グレート・イトー（上田馬之助）とタッグを組み、アメリカ各地で人気を博した。コンビ解消後はカナダへ転戦。

1972年には、ジャイアント馬場の離脱で危機に陥っていた日本プロレスに帰国。リンゴ潰しというパフォーマンスで話題を呼び、NWA世界ジュニアヘビー級選手権にも挑戦するなど、再び注目を集めた。同年、グレート小鹿とのタッグでアジアタッグ王座を獲得する快挙も成し遂げた。しかし、同年、日本プロレスの活動停止に伴い、大木金太郎らと共に全日本プロレスに移籍した。

しかし、全日本プロレスでの松岡巌鉄のキャリアは長くは続かなかった。馬場との確執や上田馬之助との関係など、様々な要因が絡み合い、全日本では冷遇され、出場機会に恵まれなかった。結局、移籍からわずか3ヶ月後の1973年10月9日、上田と共に全日本プロレスを離脱した。

日本テレビとの契約により、国内他団体への出場が禁止されていたため、上田と共に新団体設立を模索するも、資金難などで頓挫。海外マットへの転戦も試みたが、上田とは決別。その後は山口県岩国市で海産物店に勤務しながら、海外のプロモーターに手紙を送り、プロレス界復帰を目指したという。

1974年2月にはNWAミッドアトランティック地区で活動再開。ミスター林とタッグを組むなどしたが、同年いっぱいでプロレス界から引退した。引退後、彼の消息は途絶え、現在も不明のままである。晩年の詳細については、関係者にも伝わっておらず、多くの謎に包まれている。

松岡巌鉄の残した足跡は、大相撲からプロレスへと活躍の場を変え、数々のタイトルを獲得、そして様々な事件に巻き込まれた波瀾万丈の人生だったと言える。謎に包まれた晩年を含め、彼の生涯はプロレス史に一つの大きな謎として残るであろう。彼のリングネームである正剛山、ミスター松岡、そして松岡巌鉄は、プロレスファンの記憶に刻まれた名である。得意技は、ヘッドシザース、ドロップキック、頭突き、クロー攻撃、逆エビ固めなど。獲得タイトルには、1970年 テネシー地区世界タッグ王座、1971年 NWA USタッグ王座（パートナー：マシオ駒）、1973年 アジアタッグ王座などがある。

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