大木金太郎

大木金太郎：伝説の頭突き王、波乱の生涯

1929年2月24日、大韓民国（当時日本統治時代の朝鮮）に生まれた大木金太郎（本名：金泰植）は、韓国プロレス界のパイオニアであり、日本プロレス界においても大きな足跡を残した、伝説的なプロレスラーです。

若き日の金太郎は、シルム（韓国相撲）選手として活躍していました。力道山にあこがれ、1958年、漁船で日本に密入国。しかし、翌年入管法違反で逮捕されます。この危機を救ったのは、力道山でした。力道山の奔走により釈放された金太郎は、日本プロレスに入門し、1959年11月、「大木金太郎」のリングネームでデビューを果たします。

デビューした年には、ジャイアント馬場、アントニオ猪木らとともに「若手三羽烏」と呼ばれ、将来を嘱望されました。その後、アメリカへ武者修行に出かけ、WWA USタッグ王座を獲得するなど実績を重ねますが、1963年の力道山襲撃事件を機に一時帰国。1964年には再び渡米し、NWA世界ヘビー級王座に挑戦するも惜敗。この試合では顔面を24針も縫う重傷を負っています。

1965年には、韓国で開催された極東ヘビー級王座決定トーナメントで優勝。初代王者に輝き、日本と韓国を股に掛けて防衛戦を続けました。1966年には、東京プロレスの旗揚げや猪木の日本プロレス離脱といった状況変化の中、日本プロレスに呼び戻されますが、リングネーム変更は失敗に終わり、再び「大木金太郎」として活躍。しかし、猪木の日本プロレス復帰によって、再び馬場と猪木の陰に隠れることとなります。

1967年にはWWA世界ヘビー級王座を獲得し、韓国プロレス界のトップに立ちますが、すぐに王座を奪われてしまいます。その後、1968年にはアジアヘビー級王座を獲得。バスター・ロイド、ブル・ラモスなど、そうそうたるレスラーたちを相手に防衛戦を繰り広げます。

1971年には、猪木と馬場の日本プロレス退団という激動期に、坂口征二に次ぐ日本プロレスの看板選手、そして選手会長に就任。1972年にはボボ・ブラジルとの頭突き対決でインターナショナル・ヘビー級王座を獲得しますが、日本プロレスは人気低迷に陥ります。

1973年、日本プロレスは、NETテレビの圧力もあって新日本プロレスとの合併を模索しますが、韓国に滞在していた金太郎がこれに猛反対。合併は破談となり、日本プロレスは崩壊。金太郎は、全日本プロレスに入団しますが、冷遇されたため、すぐに韓国へ帰国します。

その後、新日本プロレスや全日本プロレスに参戦し、猪木や馬場らと対戦。1974年には猪木とのシングルマッチで、猪木から初の、そして唯一の勝利を収めます。また、坂口征二とは、日本プロレス崩壊時からの確執から、壮絶な喧嘩マッチを繰り広げました。

全日本プロレスでは、馬場、鶴田友美らと激闘を繰り広げ、師弟タッグを組んだキム・ドク（タイガー戸口）と共にインターナショナル・タッグ王座を獲得するなど、多くのタイトルを獲得。国際プロレスにも参戦しますが、目の負傷を理由に退団。その後、NWA加盟団体としての立場から国際プロレスでのインター王座防衛戦を問題視され、1981年に王座を返上し全日本プロレスに復帰しました。

1982年には、首の持病が悪化し、事実上の引退となります。1995年には、「夢の懸け橋」で引退セレモニーが行われ、プロレス界への貢献を称えられました。

晩年は病気と闘いながらも、韓国プロレス界の発展に尽力。2006年10月26日、ソウルで死去。77歳でした。2020年には、韓国国家顕彰者として国立墓地に改葬されました。

大木金太郎は、その卓越したレスリング技術と、独特の頭突き技「原爆頭突き」で知られ、多くのファンを魅了しました。韓国と日本のプロレス界に多大な貢献をした、まさに伝説のレスラーと言えるでしょう。その生涯は、困難を乗り越え、常にプロレス界の発展を目指した、不屈の精神の物語でした。彼の功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索