松平康任

松平康任（まつだいら やすとう）

松平康任は、江戸時代後期に活躍した大名で、石見国浜田藩の藩主であり、老中として幕府の要職を歴任しました。松井松平家8代目として、その名を歴史に刻んでいます。

生涯

松平康任は、分家旗本である松平康道の長男として生まれましたが、浜田藩主であった松平康定に実子がいなかったため、その婿養子となり家督を相続しました。文化・文政期には、幕府の実力者であった水野忠成の側近として行動し、彼に追随する形で順調に昇進を重ね、老中にまで上り詰めました。

しかし、忠成と同様に、康任もまた賄賂などの不正行為に寛容であり、但馬出石藩の筆頭家老である仙石左京から巨額の賄賂を受け取っていたことが明らかになりました。さらに、天保2年（1831年）には、実弟の娘を左京の息子に嫁がせるなど、仙石家との関係を深めました。これらの行為が、後に康任失脚のきっかけとなる布石となっていきます。

水野忠成の死後、康任は老中首座に就任しましたが、この頃から幕府内では、康任派と水野忠邦派の対立が激化しました。天保5年（1834年）に発生した仙石騒動では、康任は仙石左京に肩入れした不正な計らいを行ったことが発覚し、老中を辞任せざるを得なくなりました。

さらに、浜田藩ぐるみで竹島での密貿易を行っていた事実（竹島事件）も明るみに出て、康任は「下野守」と改名させられたうえ、永蟄居を命じられました。康任の後を継いだ次男の康爵は、間もなく陸奥棚倉へ懲罰的な転封を命じられることとなりました。

天保12年（1841年）、康任は63歳でその生涯を閉じました。

経歴

安永8年（1779年）：誕生
文化14年（1817年）：寺社奉行に就任
文政5年（1822年）：大坂城代に就任
文政8年（1825年）：京都所司代に就任
文政9年（1826年）：老中に就任
天保5年（1834年）：勝手掛老中に就任
天保6年（1835年）：仙石騒動に巻き込まれ失脚
天保12年（1841年）：死去

系譜

実父：松平康道
実母：五島盛道の娘
養父：松平康定
正室：万喜姫（松平康定の娘）
子女：
松平康爵（次男）
松平康圭（三男）
松平康寿
達（亀井茲方正室、後に諏訪忠誠継室）
峯松（二女、小出英発正室）
聡子（三女、鳥居忠挙正室）
知姫（松平定芝正室）
簾子（間部詮勝正室）
愛姫（溝口直溥正室）

松平康任の生涯は、幕末の政治腐敗を象徴する出来事として、後世に語り継がれています。賄賂や不正が横行する中で、自らの地位を築き、そして失墜した康任の姿は、歴史の教訓として深く心に刻まれるべきでしょう。

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