松平康英 (長崎奉行)

松平 康英の生涯

松平康英（まつだいら やすひで、1768年3月23日 - 1808年10月6日）は、江戸時代後期の旗本であり、長崎奉行を務めた重要な政治家です。康英は高家旗本前田清長の三男であり、幼名は栄之助、また別名として康秀や康平もあります。彼は公の記録では宝暦11年（1761年）生まれとして知られていますが、実際の生年は明和5年（1768年）であることが、家譜によって確認されています。

康英は1777年に旗本松平家の家督を相続し、2000石の領地を受け継ぎました。その後、彼の官職は昇進を重ね、1788年には中奥番士に、1794年には御徒頭、1796年には西丸目付、そして最終的には1807年に長崎奉行に就任します。

フェートン号事件

康英が奉行として在任する中、彼にとって最も重要な出来事が1812年のフェートン号事件です。この事件は、イギリス船フェートン号が長崎港に侵入し、オランダ商館員を捕縛、港内の捜索を行うという危機的な状況を引き起こしました。

フェートン号は、オランダ国旗を掲げて長崎に入りました。このため、康英は港湾内の警備を強化する必要を感じ、福岡藩や佐賀藩に出兵を要請しました。しかし、当時の藩兵は経費削減の名目で人数を減らしていたため、迅速な対応が難航しました。特に佐賀藩は、警衛当番の責務を果たさず、動きが鈍くなっていました。

追い打ちをかけるように、フェートン号の乗組員からは、港内の航行を妨げた場合、長崎の町を焼き払うと脅迫を受けます。そのため、康英はやむを得ずフェートン号の要求に応じることとなりました。

この状況下で康英は、武力衝突が避けられない場合でも交渉には強硬に臨む姿勢を貫いていましたが、オランダ商館の長であるヘンドリック・ドゥーフの説得により、最終的には彼の要求を受け入れました。

自害

事件を受け、康英は自らの意に反して外国からの圧力に屈したことに責任を感じ、切腹して自害する決断を下しました。享年41歳。彼の死は幕府に大きな衝撃を与え、長崎奉行の自害という出来事は、当時の社会においても重い意味を持つものでした。

康英は長崎市の大音寺に埋葬され、また地元の人々によって諏訪神社にも祀られています。

実家の前田家系譜によると、康英の読み方は「やすひで」ではなく「やすふさ」とも記されています。そして、彼の死因については公式には病死として扱われており、死亡日も自害の日である17日ではなく、26日とされました。このように、彼の生涯や死については様々な解釈が存在しており、歴史的な重要性を持つ人物として語り継がれています。

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