松平直哉

松平直哉：激動の時代を生きた最後の藩主

松平直哉は、出雲国母里藩の第10代にして最後の藩主として歴史に名を刻みました。越前松平家母里藩分家の出身である彼は、志摩守、主計頭といった役職を歴任し、明治維新後も、母里藩知事、子爵、貴族院議員など要職を歴任するなど、激動の時代を生き抜いた稀有な存在でした。

嘉永元年（1848年）、第9代藩主・松平直温の長男として誕生した直哉。幼名は悦之進でした。安政3年（1856年）、12月15日に父の後を継ぎ、若くして藩主の座に就きます。その後、文久2年（1862年）には従五位下主計頭に叙任され、幕末の動乱期へと突入していきます。

元治元年（1864年）の第1次長州征伐においては、母里藩は消極的な姿勢を貫きました。しかし、その後幕府に働きかけ、10万石の格式を認められるなど、巧みな外交手腕も垣間見えます。

明治維新を迎えると、明治2年（1869年）6月25日、版籍奉還により母里藩知事に任命されます。明治3年（1870年）には藩政改革に着手し、士族の帰農政策を推進しましたが、これは残念ながら成功には至りませんでした。明治4年（1871年）7月15日、廃藩置県により藩知事を免職。東京への移住を試みましたが、領民からの強い反対を受けました。これは、彼の人となり、藩政における彼の役割が、人々の心に深く刻まれていたことを示しています。

廃藩置県後も、直哉の活動は続きます。明治8年（1875年）12月には、母里小学校（現在の安来市立母里小学校）に資金を提供するなど、教育にも貢献しました。明治17年（1884年）7月8日には華族令により子爵に叙せられ、明治23年（1890年）7月10日には貴族院議員に就任。死去するまでその地位を保ちました。

東京に移住後も、赤坂区区会議員、同副議長、同区学務委員などを歴任し、地域社会の発展にも貢献しました。貴族院議員としての活動では、政策決定に影響を与え、国の発展に貢献したと考えられます。

明治33年（1900年）1月3日、松平直哉は生涯を閉じました。彼の生涯は、藩主としての責務、明治維新という激動の時代への対応、そして近代日本における政治参加と地域社会への貢献という、多様な側面から成り立っています。その波瀾に満ちた人生は、現代に生きる私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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