松村努 (指揮者)

松村努（まつむら つとむ）は、日本の合唱指揮者として知られています。神奈川県出身で、東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業後、声楽を三林輝夫、河瀬柳史に、指揮を黒岩英臣、ヘルムート・リリングに師事しました。当初は宗教曲のソリストとして活動していましたが、その後、東京と神奈川を中心に合唱団の指揮・指導に携わるようになりました。現在では、13の合唱団をまとめる「Diamond Family」を組織し、その指導者として活躍しています。

特に注目されるのは、松村が設立に大きく貢献した「Combinir di Corista」（コンビーニ・ディ・コリスタ）、通称「コンビニ」です。この合唱団を指揮し、全日本合唱コンクール全国大会において、2008年から2022年の15年間で、13回の金賞を受賞（2013年は不参加、2020年は大会中止）。さらに、最高賞である文部科学大臣賞を8回（2009～2012年、2018年、2019年、2021年、2022年）も獲得するという、輝かしい実績を誇っています。また、コンクールの審査員や各種講習会の講師も積極的に務め、合唱音楽の普及と発展に尽力しています。

松村は、現在、日本合唱指揮者協会の副理事長、全日本合唱連盟の副理事長および業務執行理事、そして神奈川県合唱連盟の顧問という要職を兼任しています。

松村の音楽活動の中心は、ルネサンスから現代に至るまでの宗教作品です。彼の音楽に対する姿勢は、「コンビニ」の設立時にも明確に示されています。合唱団のレパートリーを「品揃え」と捉え、多様なジャンルの曲目を扱うことにこだわりました。この「品揃え」へのこだわりこそが、合唱団の名前をコンビニエンスストアにちなんで「コンビーニ・ディ・コリスタ」とした理由です。

松村の音楽の原点は、幼少期に所属した鎌倉・雪ノ下教会のグロリア少年合唱団での経験にあります。小学2年生の春に入団し、ヘンデルの「メサイア」やバッハの「マタイ受難曲」といったバロック音楽に親しみました。特に「メサイア」には大きな衝撃を受け、「その美しさに魅了され、モジュラータイプの小型ステレオで、すり切れるまで聴き続けた」と語っています。この経験から、彼は「メサイア」には子どもを夢中にさせる特別な魅力があると感じています。長じてからは、グロリア少年合唱団の団長・指揮者を務め、1989年には同団を率いてイタリア演奏旅行を行い、ローマ法王の謁見演奏という名誉にも与かっています。また、その他にも海外での演奏経験を豊富に有しています。

著書として「必ず役立つ 合唱の本 教会音楽編」（2015年、ヤマハミュージックメディア）があります。この書籍は、合唱音楽、特に教会音楽の理解を深める上で貴重な資料となっています。

松村努は、合唱指揮者として卓越した才能を発揮するだけでなく、合唱音楽の指導者、教育者としても多大な貢献をしており、日本の合唱音楽界において重要な人物の一人と言えるでしょう。

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