松枝到

松枝到氏：文化史・美術史研究への貢献

松枝到（まつえだ いたる）氏は、1953年生まれの文化史家、美術史家で、和光大学名誉教授の地位を築きました。2023年12月4日、癌のため逝去されました。

生涯と学術活動

鎌倉市で、中国文学者である松枝茂夫氏を父として生まれました。幼少期から学問的な環境に囲まれ育った氏は、和光大学人文学部芸術学科に進学。西洋美術史を専攻し、前田耕作氏の指導の下、専門性を高めていきます。大学卒業後は早稲田大学大学院に進み、修士号を取得。その後は編集者としてのキャリアを積み重ねる傍ら、アジア文化史を中心とした評論活動も積極的に展開しました。

和光大学表現学部教授に就任し、長年にわたって後進の育成と研究活動に尽力。2023年3月末に定年退職を迎えるまで、教育と研究の両面で大きな足跡を残しました。氏の研究は、西洋美術史にとどまらず、幅広い文化史的な視点を取り入れ、多角的なアプローチによって知られるようになりました。

著作活動

松枝氏は、単著に加え、共編著や翻訳など、多岐にわたる著作活動を展開。その著作は、ユーモアや笑いの文化史から、神話や象徴、イメージの分析まで、多様なテーマを扱っています。

代表的な著作としては、以下のものがあげられます。

共編著:

『ユーモアと笑いの至福』（平凡社、東洋文庫、ふしぎの国）1989年
『叛乱者たちの夢』（平凡社、東洋文庫、ふしぎの国）1989年
『異国への旅・彼岸への旅』（平凡社、東洋文庫、ふしぎの国）1989年
『笑う人間 / 笑いの現在』（西村清和氏共著、ポーラ文化研究所）1994年
『ヴァールブルク学派 文化科学の革新』（平凡社 ヴァールブルクコレクション）1998年 - 編者代表
『神話・象徴・イメージ』（蔵持不三也氏、永澤峻氏共編、原書房）2003年 - 前田耕作氏退任記念論集
『象徴図像研究 動物と象徴』（和光大学総合文化研究所・編、言叢社）2006年 - 共同研究

翻訳:

『シンボルの遺産』（フリッツ・ザクスル著、栗野康和氏共訳、せりか書房）1980年、ちくま学芸文庫 2005年 - 改訂版
『衣裳のフォークロア』（P・G・ボガトゥイリョフ著、中沢新一共訳、せりか書房）1981年
『イコノゲネシス イメージからイコンへ』（H・W・ジャンソン/J・ビアウォストツキ著、西野嘉章氏共訳、平凡社、叢書ヒストリー・オヴ・アイディアズ）1987年
* 『シャーマン 異界への旅人』（ジョーン・ハリファクス著、平凡社、イメージの博物誌26）1992年

これらの著作を通して、氏は文化史、美術史研究に多大な貢献を果たしました。

家族環境

松枝氏の父、松枝茂夫氏は著名な中国文学者であり、東京都立大学名誉教授でした。学術的な家系に育ち、その環境が氏の学問への道を形成する上で大きな影響を与えたと考えられます。

まとめ

松枝到氏は、西洋美術史を専門としながらも、アジア文化史を含む幅広い視野で研究活動を行い、多くの著作を残しました。教育者としても、後進の育成に貢献。その功績は、日本の文化史・美術史研究に大きな足跡を残すものとなりました。惜しまれつつも逝去された松枝氏の業績は、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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