松永尺五

松永尺五（1592年 - 1657年）は、江戸時代初期に活躍した儒学者です。本名を松永昌三、字を遐年といい、松永貞徳の子として京都に生まれました。

儒学の大家である藤原惺窩に師事し、程朱学を深く学びました。林羅山、那波活所、堀杏庵と並び、惺窩門下の四天王の一人として名を馳せました。しかし、幕府や諸藩に仕官することなく、在野の学者として活動しました。

京都所司代であった板倉重宗から厚い庇護を受け、京都に春秋館、講習堂、尺五堂といった私塾を開設し、多くの弟子を育成しました。彼の学問は、当時の知識人たちに大きな影響を与えました。

著書としては、『一切経抜萃』、『大海一滴』、『彝倫抄』、『五経集注首書』、『四書事文実録』、『古文後集首書』、『尺五先生全集』などが挙げられます。特に『彝倫抄』は、『日本思想大系28 藤原惺窩・林羅山』（玉懸博之校注、岩波書店）に収録されており、彼の思想を知る上で重要な文献となっています。

門下からは、木下順庵、貝原益軒、安東省菴といった著名な学者を輩出しました。彼らの活躍は、松永尺五の教育の賜物と言えるでしょう。

松永尺五は、幕府に仕えることなく、独自の立場で儒学を研究し、教育活動を通じて多くの人材を育成したことで、江戸時代の学術文化に大きな足跡を残しました。

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