安東省菴

安東省菴：清貧を貫いた柳河藩の儒学者

安東省菴（あんどう せいあん）は、江戸時代の柳河藩に仕えた儒学者です。200石の蔵米知行取りという家禄の藩士でありながら、学問を尊び、清貧に甘んじたその生き方は、多くの人々に感銘を与えました。彼は立花道雪の重臣であった安東家忠の曾孫にあたります。

生涯

元和8年（1622年）に500石取りの藩士である安東親清の次男として生まれました。聡明で向学心に富んでいたため、寛永11年（1634年）には立花宗茂から分家を許されています。立花忠茂の時代には江戸に召し出され、近侍しました。寛永14年（1637年）の島原の乱では病身ながら従軍し、原城三の丸攻撃で負傷しています。

京都で松永尺五に師事して学問を修める傍ら、日本に亡命していた明の学者、江川入徳（陳入徳）を通じて朱舜水の情報を得ます。明暦3年（1657年）には長崎で朱舜水と会見し、師弟の契りを結びました。安東は朱舜水が日本に留まれるよう長崎奉行に働きかけ、自身の俸禄の半分を朱舜水に贈ったと伝えられています。寛文3年（1663年）に長崎で火災が発生し朱舜水の家が焼失した際には、家を新築し、焼失を免れた書物をそこに収めました。

元禄14年（1701年）、柳河にて79歳で没しました。明治44年（1911年）には、その功績が認められ、従四位が追贈されています。

人物と学問

安東省菴は幅広い学問に通じ、特定の学派に偏ることなく、学問本来の精神を追求しました。生活は清貧に甘んじ、実学を重んじました。その態度は、まるで論語に書かれた人物のようであったと言われています。伊藤東涯からは「西海の巨儒」と称えられました。

当初は朱子学を学んでいましたが、朱舜水との出会いを通じて陽明学などにも学びを広げました。朱舜水から受けた薫陶は、彼の人格形成に大きく影響したと言われています。

著書

『三忠伝』
『恥斎漫録』
『省庵文集』
『省庵遺集』

安東省菴は、学問に対する真摯な姿勢と、清貧を貫いた生き方を通して、後世に大きな影響を与えた人物です。彼の学問と思想は、現代においても学ぶべき点が多くあります。

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