松浦周吉

松浦周吉：関西合唱界を牽引した名指揮者

松浦周吉（まつうら しゅうきち、1930年1月6日 - 2019年1月5日）は、日本の合唱指揮者であり、関西地方を拠点に長きにわたり活動しました。その情熱的な指導と卓越した音楽性で、数多くの合唱団を全国レベルへと導き、日本の合唱界に多大な貢献をしました。

学生時代から頭角を現した才能

関西学院大学経済学部に在籍していた松浦は、グリークラブで学生指揮者として才能を発揮しました。1950年の第3回全日本合唱コンクール全国大会では、グリークラブを指揮して一般部門に出場、翌年の第4回大会では新設された大学部門で優勝を果たし、その実力を示しました。

大和銀行合唱団での輝かしい実績

大学卒業後、大和銀行（現りそな銀行）に入行した松浦は、1952年に大和銀行合唱団（現りそな合唱団）を結成し、指揮者に就任しました。1954年の第7回全日本合唱コンクール全国大会で、同合唱団を率いて職場部門に初出場で4位入賞。その後、同合唱団をコンクールの常連へと押し上げ、1962年の第15回大会から3年連続優勝、1977年の第30回大会から8年連続金賞、1983年、1984年の第36回、37回大会では2年連続でコンクール大賞を獲得するなど、輝かしい実績を築き上げました。全日本合唱コンクール全国大会では、通算21回の優勝・金賞を受賞しています。

幅広い指導活動と功績

松浦は、大和銀行合唱団の指導の傍ら、関西を中心に大学や一般合唱団の指導にも携わりました。その指導は多くの合唱団に影響を与え、関西の合唱界全体のレベルアップに貢献しました。また、大阪府合唱連盟理事長、全日本合唱連盟監事などの要職も歴任し、日本の合唱界の発展に尽力しました。

その功績が認められ、1998年に長井賞、2001年に和泉市文化功労賞を受賞しています。

音楽への情熱と人間性

松浦は、ヘンデル、メンデルスゾーン、ブラームスなどの作曲家を好み、特にドヴォルザーク、ハイドン、モーツァルトを敬愛していました。また、ミサ曲にも積極的に取り組み、短期間で集中して練習できるミサ曲の特性を生かして、合唱団のレベルアップを図りました。

その経歴から堅物な人物と思われがちでしたが、全日本合唱連盟の役員に就任した際、「銀行に在職しておりますが堅い人間ではありません」と述べています。しかし、一方で、テンポに非常に厳しく、メトロノームを片手に納得いくまで楽譜をみながら空振りをする姿は、団員たちの間で「インテンポの松浦」と敬意を込めて呼ばれていました。

関西合唱界のライバルたちとの熱き戦い

第4回全日本合唱コンクールで、松浦が指揮する関西学院グリークラブと、多田武彦が指揮する京都大学男声合唱団、日下部吉彦が指揮する同志社グリークラブが関西大会で対峙し、関西代表の座を巡って激しい戦いを繰り広げたことは、合唱史に残るエピソードとして知られています。特に、松浦が率いる大和銀行合唱団は、その圧倒的な実力で関西の職場合唱団の雄として君臨し、同時代の合唱人たちを魅了しました。

後世に語り継がれる功績

松浦周吉は、その卓越した音楽性と情熱的な指導によって、日本の合唱界に大きな足跡を残しました。彼の指導を受けた多くの合唱団員たちは、その音楽に対する姿勢や情熱を学び、現在もなお、その教えを胸に活躍しています。松浦の功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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