松浦篤信

松浦 篤信

江戸時代中期に肥前国平戸藩の第6代藩主を務めたのが、松浦篤信（まつら あつのぶ）です。彼は、平戸藩第4代藩主であった父・松浦鎮信（号は天祥）の四男として生まれ、母は岡氏でした。官位は従五位下・肥前守に叙されています。

幼名は数馬と称し、江戸浅草で育ちました。本来、兄で第5代藩主の松浦棟には嫡男の長がいましたが、彼が若くして亡くなったため、元禄9年（1696年）に篤信が棟の養嗣子として迎えられました。同年5月には、江戸幕府第5代将軍である徳川綱吉に拝謁を許されています。元禄11年（1698年）には江戸城での詰所が菊間に定められ、同年12月には従五位下・肥前守に叙任されました。宝永元年（1704年）には養父・棟と共に初めて領国である平戸への帰国（お国入り）を許され、宝永6年（1709年）には再び棟と共に江戸城の柳間に詰めることとなりました。

正徳3年（1713年）2月11日、養父・松浦棟が隠居したことにより、篤信は平戸藩松浦家の家督を相続し、藩主となりました。藩政を担うにあたり、領内の統治改革に着手しました。特に、農村における土地の配分や利用に関する規定を定めた「田畑割御定法」を制定し、荒廃が進む農村の再編を目指しました。また、海岸部に位置する向後崎に番所を設置するなどして、海防体制や領内の警備強化も図りました。これらの改革努力は認められるものの、領内に抜本的な変化をもたらすには至らず、その成果は限定的であったと伝えられています。

私生活においては、正室に稲葉正則の娘を迎え、さらに池内氏、松村氏、小宮氏、伊藤氏ら複数の側室を持ちました。養父の棟にはあまり子がなかったのとは対照的に、篤信自身は多くの子供に恵まれ、系譜には11男8女の名が残されています。長男の松浦有信をはじめ、誠信、交信、到、雅信、義信、信桯といった息子たちがいました。娘たちも、牧野貞通や朝倉豊良、本多忠如の正室となるなど、他家へ嫁いでいきました。

享保12年（1727年）閏1月2日、体調不良を理由に藩主の座を退く意向を示し、長男の有信に家督を譲って隠居しました。隠居後も長く存命し、宝暦6年（1756年）12月3日に74歳でその生涯を終えました。法号は松英院殿と諡されました。当初の墓所は江戸の墨田区にある天祥寺に営まれましたが、後に平戸市の雄香寺に改葬されています。

松浦篤信は、明治天皇の7代前の祖先にあたる人物としても歴史に名を残しています。

系譜

父: 松浦鎮信（第4代藩主）
母: 岡氏
養父: 松浦棟（第5代藩主、父・鎮信の長男）
正室: 稲葉正則の娘
側室: 小宮氏、池内氏、松村氏、伊藤氏
子女: 11男8女
長男: 松浦有信（生母：小宮氏とされる）
次男: 松浦誠信（生母：池内氏、後に長男・有信の養子となる）
五男: 松浦交信（生母不明）
六男: 松浦到（生母不明、後に松浦鄰の養子となる）
九男: 松浦雅信（生母不明）
十男: 松浦義信（生母不明）
十一男: 松浦信桯（生母：松村氏、後に松浦信正の養子となる）
女子: 牧野貞通正室（生母不明）
女子: 朝倉豊良室（生母不明）
女子: 吉子 - 本多忠如正室（生母不明）
女子: 松浦斉養女（生母不明、松浦斉は篤信の弟）
養子:
* 女子: 松平乗薀正室（実父：千本倶隆）

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