松平乗薀

松平乗薀（まつだいら のりもり）

松平乗薀は、江戸時代中期に活躍した大名であり、美濃国岩村藩の第4代藩主です。大給松平家の一族であり、その生涯は学問への造詣の深さと、藩主としての多岐にわたる活動によって特徴づけられます。

生涯

享保元年（1716年）、伊勢亀山藩主・松平乗邑の三男として誕生しました。幼少より学問に励み、聖堂学問所（後の昌平坂学問所）で林鳳岡に師事し、その最晩年の弟子となりました。岩村藩の世継ぎであった松平乗恒が早世したため、元文6年（1741年）に26歳で松平乗賢の養子となり、岩村藩を継承することになりました。

当初は乗賢の叔父の娘と結婚する予定でしたが、結婚前に彼女が亡くなったため、平戸藩主松浦篤信の養女と結婚しました。寛保元年（1741年）には、将軍徳川吉宗に拝謁し、同年12月には従五位下・美作守に叙任されました。

延享3年（1746年）に養父・乗賢が死去したため、家督を継ぎ、能登守に改名しました。老臣である佐藤治助信全と小菅五郎次勝明とともに将軍家に謁見し、藩主としての職務を開始しました。同年には馬場先門番を務め、屋敷替えで鍛冶橋から日本橋浜町へ移りました。この際、藩邸の者たちに対し、先代のやり方を踏襲し、定められた通りに職務を果たすよう指示しました。

延享4年（1747年）、幕府から朝鮮通信使の饗応役を命じられ、その準備に奔走しました。高橋吉左衛門や田中松育、医師の和田慶余らを藩に召し抱え、延享5年（1748年）には近江八幡で朝鮮通信使を迎えました。饗応役を無事に終えた後、再び近江八幡を訪れ、帰国する通信使に挨拶をしました。その後、岩村城に戻り、同行した藩士たちを労い、祝儀を渡しました。

寛延2年（1749年）には、初めての御暇で岩村城を訪れ、黒岩助左衛門らが出迎えました。寛延4年（1751年）には、日光山の御名代を務めました。藩政では、行政の簡素化を図ることで藩財政の再建を目指しました。

宝暦3年（1753年）には日光山祭礼奉行を、宝暦4年（1754年）には領内の90歳以上の老人に米を下賜して敬老の意を示しました。

宝暦8年（1759年）には、郡上藩主の改易に伴い、郡上八幡城の在番を命じられました。岩村藩士を派遣し、城の受け取りを完了させ、次の藩主が入城するまで城を警護しました。

宝暦12年（1763年）には、奏者番に任じられました。明和6年（1769年）には、日光山小来川口勤番を務めました。安永2年（1773年）には、飛騨で発生した大原騒動の鎮圧に際し、藩兵を率いて出兵し、騒動を収束させました。この功績により、幕府から賞賛を受けました。

安永4年（1775年）には、従四位下に叙せられました。また、駿河国内の飛び地領では、伝染病予防の薬を定期的に配布し、領民の健康を気遣いました。

天明元年（1781年）には、家督を養子の乗保に譲り、隠居しました。天明3年（1783年）、江戸で68歳で亡くなりました。

家族

正室は松浦篤信の養女でしたが、子を儲けることはありませんでした。側室の前原氏との間には3人の男子がいましたが、長男と次男は早世し、三男の乗衡は病弱でした。幕府の命により、三男の乗衡は林家に養子に出され、林述斎として林家の当主となりました。そのため、乗保を養子に迎え、家督を相続させました。

主な藩士

乗薀を支えた主な藩士には、以下の人物がいます。

家老: 佐藤治助、小菅五郎次、大郎五左衛門、黒岩助左衛門、萩山安右衛門、澤井市郎兵衛、味岡次郎左衛門、丹羽瀬牧太、小菅五平次
用人: 田中長左衛門、飯岡左衛門、三好源太夫、石橋三十郎、岩松伝蔵、中島忠次郎
物頭: 石寺十左衛門、森文五郎、山川長兵衛、力丸元右衛門、小嶋段四郎、富沢忠太夫、宇野安太夫、澤八郎右衛門、大山傳八郎

参考文献

『岩村町史』「十五 岩村藩主時代 3 松平氏」 p193～p227 岩村町史刊行委員会 1961年
* 『恵那郡史』「第七篇 第二十八章 諸藩分治 其一 岩村藩 松平氏七代」 p218～p230　恵那郡教育会 大正15年（1926年）

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