松浦総三

松浦総三（まつうら そうぞう、本名：松浦 総蔵、1914年11月25日 - 2011年7月6日）は、山梨県甲府市出身の社会評論家、編集者、ジャーナリスト教育者です。

生涯

中央大学を中退後、改造社の編集者としてキャリアをスタートさせました。その後、家永三郎らと共に「東京大空襲・戦災誌」を刊行し、菊池寛賞を受賞しました。この功績は、松浦の編集者としての才能を示すと同時に、社会的な出来事を深く掘り下げ、世に問う姿勢の表れと言えるでしょう。

50代からは、反天皇制、反戦の立場を明確にし、積極的に論陣を張りました。この時期から、松浦の評論家としての活動は、より社会の構造的な問題に焦点を当てるようになります。また、日本ジャーナリスト専門学校で教鞭を執り、ジャーナリズムの世界で活躍する多くの後進を育成しました。教育者としての松浦は、単に知識を伝えるだけでなく、社会に対する批判的な視点を持つことの重要性を学生たちに教えたと言えるでしょう。

平和運動にも積極的に参加し、西田敏行、山田洋次、黒柳徹子らと共に「平和のための戦争展」（日本中国友好協会主催）の呼びかけ人を務めました。これらの活動は、松浦が社会の不条理に対し、行動をもって異議を唱える人物であったことを示しています。2011年7月6日、結腸がんのため東京都東大和市の病院で96歳で死去しました。

著書

松浦は、多数の著作を通じて、自身の社会観を世に問いました。その著書は、戦時下の言論弾圧、戦後ジャーナリズム、天皇制、マスコミ批判など、多岐にわたります。主な著書には以下のようなものがあります。

『占領下の言論弾圧』（1969年）
『東京が三度燃える日』（1971年）※後に『東京大惨害ドキュメント』と改題
『戦時下の言論統制 体験と資料』（1975年）
『天皇とマスコミ』（1975年）
『戦後ジャーナリズム史論 出版の体験と研究』（1975年）
『文藝春秋と天皇 タカ派ジャーナリズムと敬語報道』（1977年）
『現代ジャーナリズム事件誌 最近『文春』誌学・『週刊新潮』論他』（1977年）
『週刊誌を斬る 実践的反動マスコミ批判』（1980年）
『スキャンダラスな時代 80年代の週刊誌を斬る』（1982年）
『松浦総三の仕事 1-3』（1984-1985年）
『週刊誌の中の天皇 週刊誌評1983-1985年』（1989年）
『天皇報道の嵐の中で 週刊誌評1986-1988年』（1989年）
『天皇裕仁と東京大空襲』（1994年）
『天皇裕仁と地方都市空襲』（1995年）
『「天声人語」の天皇と戦争 〈神の国〉報道研究』（2000年）

これらの著書は、ジャーナリズムに対する深い洞察と、社会への強い問題意識を示しています。松浦は、単に過去の出来事を記録するだけでなく、それらを現代社会の問題と結びつけ、読者に問いかけるような視点を提供しました。

共編著

松浦は、単著だけでなく、多くの共編著も手掛けました。これらの共編著は、彼の幅広い関心と、他者との共同作業を通じて社会的なテーマを深く掘り下げようとする姿勢を表しています。主な共編著には以下のようなものがあります。

『昭和特高弾圧史 1-8』（明石博隆共編、1975-1976年）
『『文藝春秋』の研究 タカ派ジャーナリズムの思想と論理』（1977年）
『太平洋戦争末期の市民生活 空襲・教育・報道・衣食住』（早乙女勝元共編、1977年）
『われわれにとって「君が代」とはなにか 国歌論争のすすめ』（石上正夫共編、1977年）
『万歳岬の虹 玉砕島からの証言』（鈴木均、早乙女勝元共編、1977年）
『原稿料の研究 作家・ジャーナリストの経済学』（1978年）
『KCIAの対日マスコミ工作 その実態と実例』（中川信夫共編、1978年）
『国立国会図書館の課題』（磯村英一共編、1979年）
『あえて言う 中国とソ連への直言』（新村猛共編、1980年）
『現代マスコミ人物事典 1980/85年版、86年版』（1980-1986年）
『逃げられなかった父と母 現代「ハッピー」族の戦争研究』（レポート・日本ジャーナリスト専門学校学生、1985年）
* 『現代ニッポン年中行事』（1986年）

これらの共編著は、戦時中の出来事から現代の社会問題まで、幅広いテーマを扱っており、松浦の多面的な知識と関心が伺えます。

結論

松浦総三は、社会評論家、編集者、ジャーナリスト教育者として、激動の時代を生き抜き、その生涯を通じて、社会の不条理に声を上げ続けた人物でした。彼の著作と活動は、現代社会においても多くの示唆を与えてくれます。特に、ジャーナリズムの役割や、権力に対する批判的な視点を持つことの重要性は、今日の情報社会においても不可欠な要素と言えるでしょう。

もう一度検索