新村猛

新村 猛の生涯

新村猛（しんむら たけし）は、1905年に東京府で生まれた日本の著名なフランス文学者、言語学者、そして国語辞書編纂者です。彼は1945年から1971年まで名古屋大学で教授として教鞭を執り、名誉教授としてその生涯を過ごしました。新村は、元橘女子大学の学長でもあり、父である新村出との共同作業で国語辞書『広辞苑』を編纂したことで知られています。

学歴と初期のキャリア

京都第一中学校、第三高等学校を経て、京都帝国大学の文学部に進学し、最初は史学科に所属しましたが、すぐにフランス文学に転科し卒業。卒業後は、大学教授としての道を歩む一方で、1940年代には同人誌『世界文化』を創刊しました。この活動中に彼は反ファシズム運動に関連した活動を行い、このために1937年には治安維持法違反で逮捕され、2年間の牢獄生活を強いられました。彼の活動は、戦後の日本における自由の象徴的な行動として知れ渡ることになります。

辞書編纂の道

1939年に釈放された後、失業中だった新村は、父が進めていた国語辞書『辞苑』の改訂作業に参加することになります。当初は外来語の担当でしたが、徐々に国語項目の書直しや百科項目の拡大にも手を出しました。この大胆な行動が父との衝突を引き起こすこととなり、編纂作業に暗雲を潜り込ませました。1945年には15万語を超える原稿を完成させましたが、戦争の影響により出版社が被災し、改訂作業は難航しました。

学究の深化

1946年、彼は京都人文学園の初代園長に就任します。この頃、彼は中井正一などの友人たちとの交流を深め、学問的な議論を通じて更なる学びを得ました。戦後も父と共に辞書の編纂を続け、1955年に出版元を岩波書店に変更し、『広辞苑』の初版を刊行しました。この辞書は日本における国語辞典の権威として今も広く利用されています。

教育者としての新村

また、新村は名古屋大学文学部でフランス文学を講じ、ディドロやロマン・ロランの翻訳も手掛けました。彼は、多くの学生たちの人生に影響を与え、特に今江祥智との関わりは彼の教育者としての側面を際立たせます。1967年以降は、父の後を引き継ぎ『広辞苑』の辞書改訂作業を継続し、1971年には愛知県知事選挙に無所属候補として出馬しましたが、惜しくも敗北しました。

最晩年と遺産

新村猛は1992年10月31日に87歳で逝去しました。彼の生涯は、日本の言語学、文学研究、辞書編纂の各分野に多大な影響を及ぼし続けています。その功績は、今もなお多くの人々に受け継がれ、彼が手掛けた『広辞苑』は日本の文化の一部として強く根付いています。彼の業績や著書に触れることで、現代の日本語に対する理解が深まることでしょう。

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