松田ナミ

松田ナミの生涯とハンセン病医療への貢献

松田ナミ（まつだ なみ、1904年 - 1995年）は、熊本県八代市に生まれ、東京女子医学専門学校（現在の東京女子医科大学）を卒業した日本の医師です。彼女は生涯を通じてハンセン病患者の治療とケアに尽力し、その献身的な活動は多くの患者を勇気づけました。

初期の活動とキリスト教との出会い

1923年、松田は東京女子医学専門学校に入学し、姉も同学校出身の医師でした。学生時代には、日本キリスト教団の教会に通い、そこで内村鑑三の聖書研究会に出席していた植木良佐医師と出会います。この出会いが、後にハンセン病医療に携わることになる大西富美子や名和千嘉といった同僚たちとの連帯を深めるきっかけとなりました。

ハンセン病療養所での活動

1935年、松田は九州療養所（国立療養所菊池恵楓園）に赴任し、ハンセン病患者の治療に携わるようになりました。彼女は著書で、ハンセン病の悲惨さを痛感したと述べています。当時の療養所では、夫婦舎がなく、男女の区別が厳格であり、夜間の急患も男子寮に限られていました。また、戦時中は医師や看護師が召集されるなど、医療現場は非常に厳しい状況でした。

1938年、松田は沖縄に新設された国頭愛楽園への招請を受け、菊池恵楓園長の許可を得られないまま辞表を提出し、愛楽園に赴任しました。愛楽園での松田は、戦争の激化により患者と共に避難壕での生活を余儀なくされました。爆撃が続く中、彼女は患者の治療を続け、壕から壕へ決死の往診を行いました。この過酷な状況下で、彼女は生きることの尊さを深く感じたと述べています。

戦後の活動と晩年

1948年、松田は沖縄を離れ九州に戻り、国立療養所星塚敬愛園に勤務しました。星塚敬愛園では、彼女の功績を讃え、テレビ出演や西日本文化賞の受賞も果たしています。また、彼女はクリスチャンの看護婦であった井藤道子と交流を続け、その著書には松田の写真が掲載されています。晩年は福岡市博多に自宅を移し、1995年11月14日に逝去しました。

クリスチャンとしての信仰

松田は、クリスチャンとしての信仰を深く持ち続け、それは彼女の医療活動の原動力となっていました。彼女の治療を受けた患者は、他の医師が回診を怠る中、彼女が夜遅くまで病室を回り、患者一人ひとりに寄り添ったことを証言しています。沖縄愛楽園の教会関係者も、彼女に励まされたと述べています。

研究と業績

松田は、ハンセン病に関する研究にも取り組み、以下の論文を発表しました。

らいに於ける「ヒスタミン」皮膚反応 (1943)
国頭愛楽園における女子患者の月経及び産児に関する調査 (1944)
* 戦後における沖縄のらいに就いて (1949)

また、沖縄県公文書館には、米軍が撮影した戦後の愛楽園の写真の中に、松田の姿が記録されています。彼女の生涯と功績は、東京女子医大皮膚科の文献や、自著『予定の道』にも詳しく記されています。

松田ナミは、ハンセン病患者のために生涯を捧げた医師であり、その献身的な活動は、私たちに深い感動と教訓を与えてくれます。彼女の生き方は、困難な状況においても、人々に寄り添い、希望を与えることができることを示しています。

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