松虫停留場

松虫停留場（まつむしていりゅうじょう）

大阪府大阪市阿倍野区に位置する、阪堺電気軌道上町線の停留場です。阿倍野元町および松虫通に面しており、駅番号はHN03が付与されています。周辺は閑静な住宅街が広がる一方、近接するあべの筋沿いに出ると活気のある商店街があり、学校も多いため学生の姿も多く見られます。地域に密着した、歴史ある停留場として利用されています。

歴史

松虫停留場は、1910年（明治43年）10月1日に南海上町線の開業と同時に開設されました。以来、路線の歴史と共に歩んできました。運営会社の変遷としては、戦時中の1944年（昭和19年）6月1日には会社合併により近畿日本鉄道の駅となり、戦後の1947年（昭和22年）6月1日には会社分離に伴い南海電気鉄道の駅に戻りました。その後、1980年（昭和55年）12月1日には、南海電気鉄道からの分社により阪堺電気軌道へ移管され、現在に至ります。

構造

停留場は相対式ホーム2面2線の構造を備えています。ホームは上町線が走る道路の中央に配置されており、天王寺駅前方面に向かうホームの天王寺駅前寄りには踏切があります。利用者が雨をしのげるよう、両ホームには上屋が設置されています。天王寺駅前方面行きのホームは、2両編成の電車が停車できる十分な長さを確保しています。

かつては、住吉大社方面寄りに手動式の非常用上下渡り線が設けられていました。これは、主に当停留場より北側の併用軌道区間において、線路に障害が発生したり、事件・事故・災害などにより通常の列車運行が不可能となった場合に備えるための設備でした。こうした不測の事態が発生した際には、この渡り線を用いて、我孫子道方面から当停留場まで運行する臨時系統の折り返し運転が行われることがありました。しかし、この渡り線は2020年（令和2年）までに撤去されており、現在は存在しません。

過去には、この停留場が運行上の重要な地点となった出来事もあります。例えば、2005年（平成17年）5月に発生した阿倍野駅付近での水道管破裂事故により、天王寺駅前方面への運行ができなくなった際には、当停留場を終点とする臨時運行が行われました。この際、電車の方向幕や電光表示は「天王寺駅前」のまま運用されましたが、運転席の窓にA4サイズ程度の紙に手書きで「松虫」と記したものが貼り付けられて運行されました。また、この事故の影響で、当駅と天王寺駅前間を結ぶ主要道路「あべの筋」の一部区間が通行止めとなり、同区間を走行する大阪市営バス（現在の大阪シティバス）も迂回運行を強いられました。しかし、鉄道運休に伴うバスによる振替輸送は実施されませんでした。

停留場周辺

松虫停留場周辺は、住宅街の中に比較的小規模な飲食店が見られる程度ですが、すぐ近くを通る「あべの筋」沿いに出ると、日用品店や飲食店など、多様な商店が多数軒を連ねています。この地域は学校が多く集まる文教地区の側面も持ち合わせており、特に朝夕の時間帯には多くの学生が行き交う様子を目にすることができます。静かな住宅街と賑やかな商業エリア、そして学校が混在する、生活感あふれる環境です。

バス路線

当停留場の周辺には、大阪シティバスの停留所が複数設置されており、鉄道との乗り換えや、バスのみでの移動に利用されています。停留場の南東側には「松虫」バス停留所があります。この停留所は、1990年（平成2年）までは「東天下茶屋」という名称でした。また、あべの橋や大阪駅前方面へ向かう場合は、当停留場から北へ少し進んだ場所にある「阿倍野筋五丁目」（北行）停留所も比較的近く、便利に利用できます。

現在、「松虫」バス停留所には、主に以下の系統が停車します。

62号系統：上本町六丁目南・大阪駅前 行き / 住吉車庫前 行き
63号系統：浅香 行き / あべの橋 行き
64号系統：おりおの橋 行き / あべの橋 行き
67号系統：あべの橋 行き / 住吉車庫前 行き

過去には、他の系統も運行されていました。2008年3月29日までは20号系統（JR平野駅 - あべの橋間）、2013年3月31日までは赤バスの阿倍野ループ、2014年3月31日までは47号系統（地下鉄住之江公園 - あべの橋間）が当停留所付近を経由して運行されていましたが、現在はいずれも廃止または経路変更されています。

隣の停留場

阪堺電気軌道上町線における当停留場の隣の停留場は以下の通りです。

* 阿倍野停留場 (HN02) ← 松虫停留場 (HN03) → 東天下茶屋停留場 (HN04)

なお、現在の阿倍野停留場と当停留場の間には、かつて「中道（なかみち）駅」という停留場が存在していました。この中道駅は1970年頃まで利用されていましたが、現在は廃止されています。

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