板倉由明

板倉由明について

板倉由明（いたくら よしあき）は、1932年に生まれ、1999年に亡くなった日本の経営者であり、歴史研究者でありました。神奈川県横浜市で育った彼は、横浜国立大学工学部を1958年に卒業後、製菓機械の製造業を行う板倉製作所を経営しました。経営者としての側面だけでなく、1981年からは戦史研究、とりわけ南京事件、慰安婦問題、歴史教科書問題など、さまざまな歴史上の重要な課題に取り組むようになりました。

南京事件の研究

南京事件に関して、板倉は中国側の被害者数を1万から2万人と見積もり、30万人を超える大虐殺と主張する説に対しては一貫して批判を行ってきました。この見解は、特に南京事件の論争が活発だった時期において重要なものでありました。また、板倉は『南京戦史』の編集委員としても活動し、歴史的事実の探求に貢献しました。

板倉は、同時期の現代史家秦郁彦と議論を交わしつつも、親しい関係を築いていました。驚くべきことに、南京事件を完全に否定する田中正明とも関係を持っていました。中央公論社が田中による資料の改竄を発見した際、板倉は南京事件に関する証言収集に関わっていたこともあり、改竄の鑑定を依頼されることとなりました。板倉はその内容を確認した結果、改竄の存在を疑う余地がないとの結論に達し、『歴史と人物』にその論考を発表しました。

改竄の発見とその影響

板倉の論考では、改竄によって南京事件に関するデータが意図的に操作されていたことを指摘し、それは資料の脱落や加筆だけでなく、小さな誤りも全体の解釈に影響を与え得ると述べていました。彼の見解によると、これは田中正明の意図的な行為によるものであるとし、改竄の箇所は900以上に上るとしました。

しかし、彼は田中と共闘していた時期もあり、両者は同じ出版社で議論を交わしながら、南京事件の解釈について近似の立場を取っていましたが、事件の発生を受けて板倉は田中を批判する立場に転じました。一方、洞富雄などの反対意見を持つ人物と対比した際には、自身の立場を見直す様子が伺えました。

歴史認識の多様性と評価

彼の研究と見解は賛否が分かれ、宗教学者の菱木政晴は板倉を「珍説を展開し、うんざりさせるマニアックな人」と評するなど、彼の存在は歴史観の多様性を示す要素として捉えられています。

1999年、板倉は肝不全により亡くなりました。彼の業績や見解は、現在もなお議論の余地があり、その影響は戦史研究の分野で評価されています。

主要著作

• - 『本当はこうだった南京事件』（日本図書刊行会）
• - 『間違いだらけの新聞報道』（共著、閣文社）
• - 『南京事件の真実』ブックレット（日本政策研究センター）
• - 「松井石根大将『陣中日記』改竄の怪」（『歴史と人物』昭和60年冬号）
• - 「南京事件の数量的研究」（『軍事史学』平成2年通巻101号）
• - 「南京事件-虐殺の責任論」（軍事史学会編『日中戦争の諸相』平成9年）
• - 「『ラーベ日記の徹底検証』を批判する」（『正論』平成10年6月号）

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