林又一郎 (2代目)

二代目林又一郎（1893年7月3日 - 1966年12月31日）は、明治から昭和にかけて活躍した歌舞伎役者です。屋号は成駒屋、定紋は花菱三つ蝶、替紋は又一イ菱。俳名に五色、三蝶を持ち、本名は林長三郎といいます。

初代中村鴈治郎の長男として大阪に生まれ、1901年3月に大阪中座で初舞台を踏みました。当初は本名の林長三郎を名乗り、父と共に舞台に立ちました。その後、研究会「五色座」を主催し、独自の舞台を模索するなど、その才能を開花させようと試みました。しかし、父が一代で築いた大名跡「中村鴈治郎」は、弟の四代目中村翫雀に譲ることとなりました。

1942年10月、大阪歌舞伎座で「傾城反魂香」の又平、「義経千本桜」の狐忠信などを演じ、二代目林又一郎を襲名しました。1958年には、弟の二代目鴈治郎や、十三代目片岡仁左衛門、三代目實川延若らとともに「七人の会」を立ち上げ、その後の「仁左衛門歌舞伎」にも参加し、上方歌舞伎の復興に尽力しました。墓所は大阪市常國寺にあります。

二代目林又一郎は、偉大な父の陰に隠れるように、また、弟に大看板を譲るほど謙虚な性格であったと言われています。さらに、上方歌舞伎が衰退期にあったことも重なり、大看板となることはありませんでした。しかし、「伊勢音頭恋寝刃」の万次郎や、「恋飛脚大和往来」の忠兵衛などの若衆役では、その古風で味わい深い演技が観客を魅了しました。また、立役としても脇を固めるなど、その確かな実力で舞台を支えました。

特に、「踊りは又一郎」と称されるほど舞踊に優れており、その実力は、東の七代目坂東三津五郎と並び称され、「昭和の歌舞伎舞踊の双璧」と謳われるほどでした。軽妙洒脱な芸風は多くの歌舞伎ファンに愛されました。襲名披露で演じた「吉野山」のほか、「流星」「三番叟」「三つ面」などを得意とし、その卓越した舞踊で観客を魅了しました。

二代目林又一郎の家族には、弟の二代目中村鴈治郎、甥の四代目坂田藤十郎、姪の中村玉緒、妹の中村芳子、甥の初代中村亀鶴、妹の林たみ、甥の林成年、姪の長谷川季子、子息の林敏夫、孫の林与一などがいます。歌舞伎界だけでなく、他の分野でも活躍している人物も多く、その一族の広がりが窺えます。

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