林基

林 基（はやし もとい）について

林 基（1914年3月15日 - 2010年11月18日）は、日本の著名な歴史学者であり、専修大学文学部の名誉教授を務めました。彼は主に日本近世史と百姓一揆の研究で知られていますが、さらに西欧や東欧の歴史書の翻訳にも多大な貢献をしました。

生い立ちと教育

林は東京市芝区田村町で生まれました。彼の父、八十吉は米卸商として働いていましたが、関東大震災を受けて実業家に転身し、芝信用金庫を設立しました。林は初等教育を終えた後、東京府立第一中学校及び府立高等学校に進学しましたが、マルクス主義に関する読書会に参加したため、政府に拘束される事態となり、また病気のために学校を中退しました。その後、慶應義塾大学予科に入学し、同校の国史学科を1940年に卒業しました。大学在学中には幸田成友の指導のもとで日欧通交史を研究し、英語、ドイツ語、フランス語に加えてオランダ語、ポルトガル語、スペイン語も学びました。大学生時代から歴史学研究会に参加するなど、彼の学問的基盤を固める活動を行っていました。

戦後の活動

戦後、林は1946年に日本共産党に入党しました。その後、石母田正や松本新八郎、藤間生大らとともに民主主義科学者協会の歴史部会を設立し、国民的歴史学運動の推進者として活躍しました。同会が発行する機関誌『歴史評論』の編集長を1960年代中頃まで務めました。また、ソビエト科学アカデミーの『世界史』全32巻を監訳し、1963年から翌年にはレニングラード大学において講義を行いました。その後、1966年には新設された専修大学文学部の教授に就任し、1984年まで教鞭を執りました。林は2010年に96歳で亡くなるまで、歴史学における重要な貢献を続けました。

エピソードと業績

林基は生涯にわたって「日本史も世界史の視点で語られるべきだ」と強調していました。彼は数万冊の蔵書を持ち、特に百姓一揆関連の文献は2008年に長野県青木村へ寄贈され、同村の歴史文化資料館において「林基文庫」として保存・公開されています。主な著作には、『百姓一揆の伝統』（1955年、1971年に続編）、『国民の歴史16 享保と寛政』（1971年）、『近世民衆史の史料学』（2001年）などがあります。彼の研究は日本の歴史学部門で留まらず、多くの人々に影響を与え続けています。

参考文献

• - 『20世紀日本人名事典 そ～わ』(日外アソシエーツ、2004年7月)
• - 鶴見俊輔監修『平和人物大事典』(日本図書センター、2006年6月)
• - 青木美智男「林基氏の訃(学界消息)」『日本歴史』第755号（吉川弘文館、2011年）
• - 斎藤純「追想 林基氏の生涯を振り返って」『歴史評論』第731号（吉川弘文館、2011年）

林基の功績は、今も多くの歴史愛好家や研究者に引き継がれ、彼の研究の意義は色褪せることがありません。

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