林房雄

林房雄の生涯と業績

林房雄（1903年5月30日 - 1975年10月9日）は、日本の著名な小説家及び文芸評論家で、特に戦後の文壇で活躍しました。本名は後藤寿夫であり、彼の人生は数々の波乱に満ちていました。

幼少期と教育

彼は大分県大分市で生まれ、父の酒浸りが原因で家計は困窮し、母は女工として働いて家計を支えました。若い頃からの困難な環境にもかかわらず、林房雄は秀才として知られ、1916年に旧制大分中学校（現・県立大分上野丘高校）に入学。家庭教師として働きながらの学びを続け、1919年には第五高等学校に進学します。この頃、彼は金融業界の小野家に助けられながら学ぶ日々を送りますが、東京帝国大学法学部には進むも中退を余儀なくされました。

文学活動の開始

1925年には『科学と芸術』を発表し、文壇への第一歩を踏み出します。1926年には京都学連事件に関連して検挙され、禁固10か月の刑に服しました。この出来事を契機に、林はプロレタリア文学へと傾倒し、短編小説『林檎』を『文芸戦線』に発表します。この時期、彼は中野重治、鹿地亘と共に文学運動に参加しました。

転向と経済的困難

考え方の変化が訪れた1930年、彼は日本共産党への資金提供が理由で治安維持法違反により逮捕されます。この経験が、彼の作品に大きな影響を与えることとなります。その後結婚し、家族と共に暮らしますが、精神的な葛藤は続きました。

家族と文学

1952年には妻の繁子が自殺するという悲劇が訪れ、林はこの出来事を経て『息子の青春』や『妻の青春』などの作品を通して理想的な家庭観を模索しました。これらの著作は、彼が描く人物たちや家族関係への故郷への情愛を反映しています。

晩年の活動

1963年には三島由紀夫との親交が開始され、二人は日本の文化や文壇について討論を重ねました。晩年には闘病生活を送りながらも、文筆活動を継続し、三島に関連する著作の執筆にも携わります。1975年、胃癌のため72歳でこの世を去りました。彼の墓地は鎌倉報国寺に立地しています。

大東亜戦争肯定論

林房雄は、戦後の神話や歴史を書いた『大東亜戦争肯定論』の著者としても知られています。この著作では、日本の近代史を幕末以来の反植民地主義の歴史として意義づけ、戦争の背後にあるナショナリズムの動きを描き出しました。彼の主張は、特にアジアにおける国際的な文脈を考慮したもので、多くの論争を呼ぶものでした。著作は今なお、日本の右翼文化に影響を与え続けています。

まとめ

林房雄の作品は、彼の人生そのものであり、困難に満ちた体験を反映しています。彼の文学には家族、社会、国家に対する深い洞察があり、今でも多くの読者に影響を与え続けています。彼の歩みを追うことで、戦後日本文学の一翼を担った彼の功績がより深く理解されることでしょう。

もう一度検索