枚岡神社

枚岡神社（ひらおかじんじゃ）は、大阪府東大阪市出雲井町に位置する神社です。古くは河内国一宮として、また近代社格制度では官幣大社に列せられた、由緒ある神社として知られています。現在は神社本庁の別表神社となっています。生駒山地の西麓に西向きに鎮座し、その背後には神津嶽があります。この山岳信仰が神社の起源とされ、中臣氏の祖である天児屋根命（あめのこやねのみこと）を主祭神としています。

歴史

起源と発展

枚岡神社の創建は、神武天皇の東征に遡ると伝えられています。天種子命が天児屋根命と比売神を神津嶽に祀ったのが始まりとされています。その後、白雉元年（650年）に現在地へと遷座しました。中臣氏の氏神として崇敬を集め、その分流である藤原氏が春日大社を創建する際には、枚岡神社の祭神である天児屋根命と比売神が勧請されました。このため、枚岡神社は「元春日」とも呼ばれています。藤原氏の隆盛とともに、枚岡神社も神階を上げ、平安時代には正一位勲三等の極位に達しました。

中世から近世

中世以降は、河内国の一宮として地域の信仰を集めました。戦国時代には織田信長の兵火により社殿が焼失しましたが、豊臣秀頼によって再建されました。江戸時代には、幕府の崇敬は薄かったものの、氏子によって本殿が造営されました。

近代以降

明治維新後、枚岡神社は官幣大社に列せられ、近代社格制度における最高位に位置づけられました。戦後、神社本庁の別表神社となっています。

祭神

枚岡神社の祭神は以下の四柱です。

第一殿：天児屋根命（あめのこやねのみこと） - 主祭神、中臣氏の祖神
第二殿：比売御神（ひめみかみ） - 天児屋根命の妻神
第三殿：経津主命（ふつぬしのみこと） - 香取神宮の祭神
第四殿：武甕槌命（たけみかづちのみこと） - 鹿島神宮の祭神

もともとは天児屋根命と比売神の二柱のみが祀られていましたが、後に経津主命と武甕槌命が合祀され、現在の四柱となりました。これらの祭神は、春日大社の祭神としても知られています。

祭神について

主祭神である天児屋根命は、中臣氏、そして藤原氏の祖神として知られています。天照大神の岩戸隠れの際には、太玉命とともに神事を行い、瓊瓊杵尊の天孫降臨にも従いました。

比売神は、天児屋根命の配偶神で、社伝では天美豆玉照比売命とされています。天児屋根命と常にペアで記されており、春日大社創建の際には、枚岡神社から分霊が勧請されています。

経津主命と武甕槌命は、それぞれ香取神宮と鹿島神宮の主祭神であり、春日大社の創建に際して勧請されたとされています。

社名

枚岡神社の社名には、「枚岡」と「平岡」の二つの表記が見られます。古代の史料には、「天児屋根命」「平岡大神社」「平岡神」「枚岡天児屋根命」「枚岡神」「枚岡神社」「枚岡社」など、さまざまな呼称が用いられていました。この二つの表記は、近世まで併用されており、現在でも石標や燈籠に「平岡」の用字が見られます。

境内

枚岡神社の境内には、本殿をはじめとする多くの社殿や施設があります。

本殿：春日造の四棟からなり、東大阪市指定有形文化財に指定されています。各殿に四柱の祭神が祀られています。
拝殿：明治12年に再建され、扁額は三条実美の筆によるものです。
枚岡梅林：かつての神宮寺の跡地に整備された梅林で、東大阪市指定名勝となっています。
神津嶽本宮：枚岡神社の創祀地とされる場所で、現在も神聖な場所として祀られています。

その他、中門、御竃殿、鶏鳴殿（社務所）、参集所、斎館などがあります。

摂末社

境内には、以下の摂末社があります。

若宮社：天児屋根命の御子神である天押雲根命を祀っています。
天神地祇社：複数の神社を合祀した神社で、天津神と国津神を祀っています。

祭事

枚岡神社では、年間を通して様々な祭事が行われています。

特殊神事

粥占神事：小正月の年占い神事です。大釜で炊いた粥の中に占竹を入れ、小豆粥の状態や占木の焦げ具合でその年の豊作や天候を占います。大阪府選択無形民俗文化財に指定されています。
注連縄掛神事：笑いによって春を招く神事です。注連縄の下で神職と氏子が笑い、春の訪れを祈ります。東大阪市指定無形民俗文化財に指定されています。

文化財

枚岡神社には、多くの文化財が指定されています。

大阪府選択無形民俗文化財

枚岡神社の粥占神事

東大阪市指定文化財

有形文化財：本殿4棟、銅製擬宝珠、銅製釣燈籠、絹本著色枚岡神社絵図
無形民俗文化財：枚岡神社注連縄掛神事
名勝：枚岡梅林

神職

枚岡神社の神職は、古代には平岡氏が務めていました。中世以降は、水走氏が宮司を、鳥居氏が禰宜を務めるようになりました。

アクセス

* 近畿日本鉄道（近鉄）奈良線枚岡駅より徒歩すぐ

まとめ

枚岡神社は、その歴史と文化的な価値から、多くの人々に崇敬されています。古代からの信仰を受け継ぎ、数々の文化財や特殊神事を今に伝える、重要な神社です。

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