枯葉 (チェット・ベイカーのアルバム)

チェット・ベイカー、苦難を乗り越え蘇る名盤『枯葉』

『枯葉』（原題：She Was Too Good to Me）は、ジャズ・トランペット奏者でありボーカリストのチェット・ベイカーが1974年に発表したアルバムです。1970年代初頭、ベイカーは音楽活動から遠ざかっていましたが、本作で劇的なカムバックを果たし、再び音楽シーンに足跡を残しました。

背景

1970年以降、レコーディングの機会を失っていたベイカーですが、1974年4月にはリー・コニッツらとライブ録音を行い、同年7月には、1970年7月録音の『Blood, Chet and Tears』以来、4年ぶりとなる本作のレコーディングに臨みました。プロデューサーのクリード・テイラーや、一部楽曲でサイドマンを務めたポール・デスモンドは、1950年代からベイカーと親交がありました。彼らのサポートも、ベイカーのカムバックを後押しする要因となりました。

音楽性と評価

本作は、ベイカーの甘く切ないトランペットの音色と、情感豊かなボーカルが堪能できる作品です。スタンダード・ナンバーである「枯葉」をはじめ、「She Was Too Good to Me」や「Tangerine」など、美しいメロディの楽曲が収録されています。ストリングスやフルート、オーボエなどが加わることで、サウンドに奥行きと彩りが与えられています。

『ビルボード』のジャズ・アルバム・チャートでは31位を記録しました。オールミュージックのスコット・ヤナウは、5点満点中2.5点を付け、「アルト奏者のポール・デスモンドが2曲で多大な貢献をしており、また、時折導入されたストリングスが、この優れたセッションに多彩さをもたらしている」と評価しています。All About Jazzのクリス・メイは、「当時のベイカーが必要としていたであろう枠組みが提供され、彼は素晴らしく詩的な演奏で、それに応えている」「このアルバムは、ベイカーが（ヘロイン依存から立ち直っていなかったとはいえ）調子を取り戻しつつあったことを示している」と評しています。また、「彼が1970年代に残した最高の録音は、間違いなくギタリストのジム・ホールのサイドマンを務めた時のものだろう」とも述べています。

収録曲

1. 枯葉 - "Autumn Leaves"
2. シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー - "She Was Too Good to Me"
3. ファンク・イン・ディープ・フリーズ - "Funk in Deep Freeze"
4. タンジェリン - "Tangerine"
5. 我が心に歌えば - "With a Song in My Heart"
6. ホワットル・アイ・ドゥー - "What'll I Do?"
7. イッツ・ユー・オア・ノー・ワン - "It's You or No One"
8. My Future Just Passed(CDボーナス・トラック)

参加ミュージシャン

チェット・ベイカー - トランペット、ボーカル
ヒューバート・ロウズ - フルート、アルト・フルート
ロメオ・ペンケ - フルート、クラリネット
ジョージ・マージ - アルト・フルート、オーボエ・ダモーレ
ポール・デスモンド - アルト・サクソフォーン
ボブ・ジェームス - エレクトリックピアノ
ロン・カーター - ダブル・ベース
スティーヴ・ガッド - ドラムス
ジャック・ディジョネット - ドラムス
デヴィッド・フリードマン - ヴィブラフォン
* ドン・セベスキー - アレンジ

まとめ

『枯葉』は、チェット・ベイカーの音楽家としての才能と、苦難を乗り越えて再び輝きを取り戻した姿を刻んだ重要な作品です。彼の音楽に触れたことのない方はもちろん、長年のファンにとっても、改めてベイカーの魅力を再発見できる一枚と言えるでしょう。

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