オーボエ・ダモーレ

オーボエ・ダモーレとは

オーボエ・ダモーレは、オーボエ属に分類されるダブルリードの木管[[楽器]]で、オーボエとイングリッシュホルンの中間的な存在です。イタリア語で「愛のオーボエ」を意味し、その名の通り、柔らかく甘美な音色が特徴です。楽器の形状はイングリッシュホルンに近く、先端部が洋ナシのように丸く膨らんでいます。

構造と音色

オーボエ・ダモーレは、音域と構造の両面でオーボエとイングリッシュホルンの中間的な位置づけにあります。通常のC管オーボエよりもやや低い音域を持ち、その音色はよりくぐもっていて、柔らかく感じられます。運指や吹奏方法はオーボエと共通しており、オーボエ奏者が演奏することが一般的です。

移調楽器であり、記譜された音よりも短3度低い音が出ます。オーボエ属の中ではアルトまたはメゾソプラノに相当する音域をカバーします。オーボエよりも低い音域を持ちますが、低音域が豊かに響くため、実際には低めの音域を担当することが多くなります。また、同じくシャープ系のD管であるバロック・フルートとの相性が良いとされています。

歴史

オーボエ・ダモーレは、バロック時代後期に登場した古[[楽器]]の一つです。1720年頃にドイツで発明されたと考えられており、主に当時のドイツ音楽で使用されました。特にヨハン・ゼバスティアン・バッハが好んで使用したことで知られ、ミサ曲ロ短調やマタイ受難曲など、多くの教会カンタータ作品で重要な役割を果たしました。また、テレマンもオーボエ・ダモーレのための協奏曲を多く残しています。

18世紀後半には人気が衰退し、古典派時代以降は忘れられていましたが、近代になってモダン・オーボエの技術を応用して再興され、バッハなどの作品の演奏に使われるようになりました。現代音楽では、ラヴェルの「ボレロ」やリヒャルト・シュトラウスの「家庭交響曲」、ドビュッシーの「管弦楽のための映像」などで使用例があります。

現在では、バロック時代の様式を復元した楽器も作られており、古楽系の楽団で演奏されています。

オーボエ・ダモーレのための協奏曲

オーボエ・ダモーレのための協奏曲は、バロック時代を中心に多くの作曲家によって書かれました。以下は代表的な作曲家と作品の一部です。

トマゾ・アルビノーニ：ニ長調（2本のオーボエ・ダモーレ、2本のコルノ・ダ・カッチャ、ファゴットのための協奏曲）
ゲオルク・フィリップ・テレマン：イ長調 TWV 51:A2、ホ短調 TWV 51:e2、ト長調 TWV 51:G3、イ長調 TWV 52:A1（2本のオーボエ・ダモーレのための協奏曲）、ニ長調 TWV 53:D3（2本のオーボエ・ダモーレ、チェロのための協奏曲）、ホ長調 TWV 53:E1（ヴィオラ・ダモーレ、オーボエ・ダモーレ、フラウト・トラヴェルソのための協奏曲）
ヨハン・ダーフィト・ハイニヒェン：イ長調 SeiH 228
クリストフ・グラウプナー：ハ長調 GWV 302、ニ長調 GWV 313、ト長調 GWV 333（フルート・ダモーレ、オーボエ・ダモーレ、ヴィオラ・ダモーレのための協奏曲）
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ：ニ長調 BWV 1053（チェンバロ協奏曲第2番 ホ長調 から再構成）、イ長調 BWV 1055（チェンバロ協奏曲第4番 イ長調 から再構成）
ヨハン・フリードリヒ・ファッシュ：ホ長調（トランペット、オーボエ・ダモーレのための協奏曲）
ユーハン・ヘルミク・ルーマン
ヨハン・ゴットリープ・グラウンとカール・ハインリヒ・グラウン：ニ長調（兄弟共作）

近代の作品

近代では、武満徹が「虹へ向かって、パルマ」というオーボエ・ダモーレ、ギター、オーケストラのための作品を作曲しています。この作品は、1984年に初演されました。

まとめ

オーボエ・ダモーレは、その愛らしい音色と歴史的な背景から、多くの音楽愛好家を魅了する楽器です。バロック音楽から現代音楽まで、幅広いジャンルで使用され、その独特な音色は、楽曲に深みと彩りを添えます。

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