柳兼子

柳兼子について

柳兼子（やなぎ かねこ、1892年（明治25年）5月18日 - 1984年（昭和59年）6月1日）は、日本の著名な声楽家であり、音楽教育者でもあります。彼女は「白樺派」と「民藝運動」の成立に寄与した柳宗悦の妻として知られ、その旧姓は中島です。祖父は日本の近代教育に影響を与えた幕末のオランダ留学生、中島兼吉です。彼女の家族には、著名な工業デザイナーの長男、柳宗理や、美術史家の次男、柳宗玄、園芸家の三男、柳宗民がいます。

生い立ちと教育

柳兼子は東京市本所区に生まれました。東京府立第一高等女学校に通い、1912年には東京音楽学校の声楽部を優等で卒業しました。彼女はその後、研究科に進学し、著名な音楽家や作曲家と共に学び、特にハンカ・シェルデルップやペツォルトに師事しました。そして、1913年に作曲した「春の草、秋の草」は、彼女の音楽活動の一つの成果となっています。1914年、東京音楽学校の研究科を退学し、白樺派の中心的人物である柳宗悦と結婚。これにより、彼女の姓は中島から柳に変更されました。

音楽活動とその影響

結婚後、柳兼子は千葉県我孫子市に移住し、その後、1925年には京都市に引越し、同志社女子専門部や京都府立第一高等女学校で講師を務めました。新婚生活の中で、当時の日本政府の朝鮮半島に対する同化政策に反対し、柳夫妻は朝鮮へ渡ってリサイタルを開催するなど、日本文化の普及に尽力しました。

彼女はその歌唱力から「声楽の神様」と称され、数多くのドイツ・リートを歌い上げました。特に、1927年に行われたグスタフ・マーラーの歌曲の日本初演では、多くの聴衆を魅了しました。1930年には自由学園で講師として活動を開始し、東京に戻った後も、音楽界での地位を確立していきました。特に1946年には皇居において御前演奏を行い、1950年에는毎日音楽賞特別賞を受賞しました。さらに、彼女は国立音楽大学の教授として1972年まで活動を続け、その後も日本芸術院の会員として貢献しました。

晩年と評価の再評価

柳兼子は85歳まで公式なリサイタルを行い、92歳での死の直前まで後進の指導に尽力しました。これは、声楽家にとって肉体を武器とする職業で考えにくいことであり、当時としては彼女を除いて87歳まで演奏活動を続けた声楽家はほとんどいませんでした。2001年には、柳兼子の音楽活動が再評価され、彼女の音源が復刻される動きが見られました。例えば、「現代日本歌曲選集2」には、彼女が83歳の時に録音された作品が収められています。

さらに、2003年には彼女の生涯を描いたドキュメンタリー映画『兼子-Kaneko』が制作され、日本国内外で広まりました。映像の中では、彼女の歌唱法に長唄要素が取り入れられていることが指摘されています。

まとめ

柳兼子は、ただの声楽家ではなく、音楽教育者としても多大な影響を与えた存在です。彼女の音楽活動は、日本の声楽界に留まらず、多くの人々に感動を与え続けています。その功績と影響は、今もなお評価され続けているのです。

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