柳家三之助

柳家 三之助(やなぎや さんのすけ)



1973年(昭和48年)5月1日生まれ。千葉県銚子市で育ち、十代目柳家小三治師匠の門下に入った真打落語家です。本名は溝口 博之。出囃子は『都鳥』、紋は『変わり羽団扇』またはオリジナルの『五瓜に雲上機』を使用しています。

生い立ちと入門



東京都で生まれ、幼少期を千葉県銚子市で過ごしました。学生時代は一貫して文化系のクラブ活動に励み、小学校では器楽部、中学校では吹奏楽部、高校では吹奏楽部と並行して演劇部に所属。特に高校時代の演劇部では、休眠状態だった部を立て直し、県大会出場を果たすなど、リーダーシップも発揮しました。大学進学後は新聞奨学生として学費を稼ぎながら、観劇や寄席巡りに親しみ、その後はDTPオペレーターのアルバイトで生計を立てました。このDTPでの経験は、後に自身の落語会のチラシ制作などに活かされています。

1995年(平成7年)9月、十代目柳家小三治師匠に弟子入り。翌1996年3月に上智大学経済学部を卒業後、5月から前座として「柳家小ざる」を名乗ります。都内の寄席で厳しい修行を積み、紀伊国屋寄席やTBS落語研究会など、様々な高座を経験しました。

昇進と活動の広がり



1999年(平成11年)11月、二ツ目に昇進し、名を「柳家三之助」と改めます。二ツ目時代から各地で落語会に出演し、精力的に活動の場を広げました。そして、2010年(平成22年)3月には真打に昇進。同年6月には鈴本演芸場で、真打昇進後としては異例の早さで定席興行の主任(トリ)を務め、実力を示しました。同年、故郷の千葉県銚子市ふるさと大使に任命され、2021年(令和3年)には、中学時代を過ごした縁で茨城県神栖市PR大使にも任命されています。

落語への取り組みとデジタル戦略



基本的には古典落語を大切に演じていますが、リスナーとの約束をきっかけに新作落語を一度演じたほか、近年は他の落語家の新作にも挑戦しています。

落語界の中でもデジタル技術やインターネット活用に早くから着目し、落語協会ホームページの運営に約15年間携わりました。インターネット落語会のナビゲーターを務めたり、Yahoo!インターネット検定「落語『通』検定」の企画や問題作成、公式テキスト執筆を手がけるなど、落語の普及に貢献。スマートフォンアプリの開発や、自身のウェブサイト、SNSを通じた情報発信にも積極的です。特に、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大により落語会の開催が困難になった際には、いち早く動画の撮影・編集・配信を自身で行い、オンラインでの有料視聴や月額制サービス「サンノスクリプション」を開始。困難な状況下でもファンとの繋がりを保ち、新しい落語の届け方を模索しました。

航空ファンというもう一つの顔



熱心な旅客機ファンであることも、柳家三之助の大きな特徴の一つです。この趣味が高じて、『オールフライトニッポン』とその続編である『ANAの女性たち』という航空関連の著書を出版。プロのパイロットや整備士、客室乗務員といった関係者へのマニアックな取材内容を、誰にでも楽しめる読み物としてまとめ、多くの反響を呼びました。

また、航空科学博物館での「航空寄席」や中部国際空港での「セントレア寄席」といった、落語に航空ネタを組み合わせたユニークな企画を定期的に開催。趣味と実益を兼ねた活動を展開しています。地方での落語会に際して、貯めたマイレージを特典航空券に変え、観客に交通費の負担をかけないように配慮するなど、ファンを大切にする一面も持ち合わせています。

「三之助をみたかい?」に象徴される活動スタイル



2004年(平成16年)に始まった自身の独演会「三之助をみたかい?」は、その継続性と、生の落語を体験する醍醐味を伝えることに重点を置いています。この独演会は、東京での開催に加え、全国各地の落語ファンが自ら企画・運営する形で広がり、現在では国内外の19ヶ所以上で開催されています。これは、出演者である三之助は同じでも、開催地ごとの特色が反映された手作りの落語会であり、地域に根差した活動を大切にする三之助の姿勢を示すものです。国内各地に加え、タンザニアマレーシアでの海外公演も実現しました。

その他の多様な活動



落語家としての高座に加え、寄席囃子の笛吹きとしても卓越した腕を持ち、TBS落語研究会や朝日名人会など、多くの舞台や録音でその演奏を披露しています。圓朝まつりの実行委員として広報活動に携わったり、若手落語家の広報を支援したりと、落語界全体の発展にも貢献しています。

テレビやラジオ、インターネット配信など、様々なメディアにも多数出演。映画『落語物語』への出演経験もあります。

古典落語の伝統を守りつつ、最新のテクノロジーや自身の趣味を駆使して新しい可能性を追求し続ける、現代を代表する落語家の一人と言えるでしょう。

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