柳田謙十郎

柳田謙十郎：哲学、平和運動、労働者教育に捧げた生涯

柳田謙十郎（1893年 - 1983年）は、日本の哲学者であり、その思想的遍歴と社会活動で知られています。彼は西田哲学の研究者として出発し、後にマルクス主義唯物論へと転向。平和運動や労働者教育にも積極的に関わりました。

生涯

柳田謙十郎は1893年、神奈川県愛甲郡南毛利村（現在の厚木市）の農家に生まれました。神奈川師範学校を経て、小学校の教員、そして岡山師範学校や岩手師範学校の教諭を務めました。1922年には京都帝国大学文学部哲学科選科に入学し、哲学の研究を本格的に開始。

卒業後は、弘前高等学校 (旧制) 教授、台北帝国大学助教授などを歴任しましたが、1941年に辞職し京都に戻りました。

西田哲学との出会いと転向

1936年、柳田は論文「知と行」によって西田幾多郎の知遇を得ました。彼は西田哲学の研究に深く没頭し、1946年からは大著『西田哲学体系』全12冊の刊行に取り組みました。その間、自宅で西田哲学ゼミ「参道塾」を開講するなど、西田哲学の普及に尽力しました。

しかし、1950年、柳田は西田哲学を捨て、マルクス主義唯物論への転向を宣言。この転向は、彼の思想における大きな転換点となりました。

戦後の活動

マルクス主義者としての柳田は、平和運動や労働者教育に積極的に参加しました。1950年には日本戦没学生記念会（わだつみ会）の初代理事長に就任。労働者教育協会の初代会長としても活動し、マルクス主義理論の普及と労働運動の前進に貢献しました。

1960年には日本共産党に入党し、党の活動にも積極的に参加。日中友好協会の会長なども務め、松川事件や血のメーデー事件での被告支援、明るい革新都政をつくる会の活動など、幅広い社会運動に関わりました。

評価

戦後、進歩的文化人として知られた柳田謙十郎ですが、戦時中は戦争を肯定する発言も行っていました。この点については、彼の思想的変遷を理解する上で考慮する必要があります。

著作

柳田謙十郎は多数の著作を残しており、主なものに『唯物論の哲学』『倫理学』『宗教論』『西田哲学と唯物論』『わが思想の遍歴』『自叙伝』などがあります。これらの著作は、『柳田謙十郎著作集』全8冊としてまとめられています。

家族

柳田謙十郎の父は村会議員を務めた柳田勘作。息子に茶道家の柳田宗葩、娘に東洋史研究者の柳田節子がいます。

柳田謙十郎は、その生涯を通じて、哲学の研究、社会運動、そして教育活動に情熱を注ぎました。彼の思想的遍歴は、日本の思想史における重要な一例として、今後も研究され続けるでしょう。

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