柳船

柳船の概要

柳船（やなぎせん）は、第二次世界大戦の最中に、ドイツと日本の間で行われた重要な海上輸送を指す名称です。この用語は、大日本帝国海軍がドイツ国が所有し、海上封鎖を突破するための特別な船舶を指して付与したものです。この船たちは、軍需品の輸送のみならず、日本が占領していたアジア地域からの貴重な資源の調達にも寄与しました。

海上封鎖の突破

柳船は主に、ドイツ北部のキールやフランスの軍港から出航し、大西洋に張り巡らされた連合国軍の厳重な海上封鎖線を突破する運行を行いました。特に1942年以降は、日本が制海権を擁していたインド洋から、昭南やペナンなどの日本海軍の拠点を経て、横須賀や横浜の港に至る航路が利用されました。この航路を通じて、ドイツは日本の求める精密機器や兵器を輸送し、日本は対抗としてドイツが必要とした各種原材料を提供しました。

柳船による輸送は「柳輸送」と「逆柳輸送」と名付けられており、日本からドイツ向けにも戦略的な資源の供給が行われました。この中で生ゴムやタングステン、錫などの原材料は、日本が占有するアジア各地から集められ、ドイツへと送られました。これらの船は、一部が日本や東南アジアに留まり、枢軸国の軍事行動にも協力しています。

知られざる事件

特に注目すべき事件として、1942年11月に発生した「横浜港ドイツ軍艦爆発事件」があります。この事件では油槽船「ウッカーマルク」が、インドネシアから日本陸軍の航空用ガソリンを運んで横浜港に着岸した際、油槽清掃中に発生したガスの引火によって大爆発を起こしました。この事故により、100人以上もの死者が出るという重大な被害が発生し、さらには隣接していたドイツ海軍の「トール」や貨物船「ロイテン」も巻き込まれました。

船舶一覧と派遣作戦

柳船に分類される各艦艇の中には、ヴェーザーラントやイレーネ、ハーフェルラント、ドッガーバンクなどがありましたが、その多くは任務中の沈没や事故により、ドイツへ無事に帰り着くことができたのは「イレーネ」と「オゾルノ」、及び他の数隻に過ぎませんでした。特にハーフェルラントは、1943年にアメリカ軍潜水艦に攻撃され神戸港へ曳航された後に敗戦を迎えました。

1942年以降、連合軍による封鎖がますます厳しくなる中で、ドイツと日本の海上通信は深刻な危機に見舞われることとなり、これを受け、日本海軍は大型潜水艦の派遣を決定し、これが「遣独潜水艦作戦」へと発展していきました。これは、ドイツからの通信や物資の受け取りを可能にするための重要な作戦でした。

柳船の運行やその歴史は、両国の戦争戦略にとって重要な一環であり、当時の国際政治や軍事行動にも大きな影響を及ぼしました。

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