柴山矢八

柴山矢八:水雷の父から日露戦争の立役者まで



柴山矢八(しばやま やはち、1850年8月20日-1924年1月27日)は、幕末から明治期にかけて活躍した海軍軍人で、最終階級は海軍大将男爵位を授けられました。鹿児島県出身、薩摩藩士の家に生まれ、東郷平八郎を従兄に持つなど、華族としての出自も持ち合わせていました。

開拓使から海軍へ:水雷開発への貢献



幼少期を薩摩藩で過ごした柴山は、薩英戦争には年齢が若かったため従軍していません。明治維新後、開拓使の一員として政府に仕官し、明治5年(1872年)から2年間アメリカに留学。帰国後は海軍へ転じ、中尉として着任しました。

初期のキャリアは、武庫司勤務からのスタートでした。水雷製造掛に配置転換されると、魚雷機雷の製造現場に身を置き、その技術開発に尽力。その功績から「水雷の父」と呼ばれる所以となっています。水雷練習所長、水雷局長を歴任し、水雷技術の向上に大きく貢献しました。

事務畑のエキスパート:艦隊勤務は限定的



柴山は、海軍における勤務の大部分を研究や事務に費やしました。艦隊勤務は比較的少なく、西南戦争で砲兵大隊に所属したことが初陣となります。「浅間」への乗組経験(1年間)もありますが、その後も事務職に戻っています。艦長を務めたのは「筑波」、「海門」、「高千穂」の3隻のみでした。

参謀本部から軍令・軍政の要職へ:山本権兵衛との関係



明治19年(1886年)には参謀本部第2局長に就任。西郷従道の随員として欧米を視察するなど、国際的な視野も養いました。帰国後は艦政局次長に就任し、軍令や軍政といった要職を歴任しました。この頃、同郷の後輩である山本権兵衛が台頭し始め、柴山ら保守派と山本ら革新派との派閥争いが水面下で繰り広げられていました。「権兵衛が種まきゃ矢八がほじくる」という揶揄歌が生まれるほどでした。しかし、シーメンス事件の際、柴山は山本の不正を否定するなど、複雑な関係性を垣間見ることができます。

異例の佐世保鎮守府司令長官:日清戦争とその後



日清戦争開戦の明治27年(1894年)、柴山は、大佐でありながら佐世保鎮守府司令長官に就任しました。鎮守府長官には少将以上の階級が求められる中、大佐での就任は海軍史上異例のことでした。そのため、長官心得として就任後、一週間後に少将に昇進しています。

日清戦争後の明治30年(1897年)には中将に昇進し、常備艦隊司令長官に任命されます。これにより、事務畑出身でありながら、初めて実戦部隊の指揮官に就くことになります。その後、海軍大学校長、呉鎮守府司令長官を歴任しました。

日露戦争における旅順口鎮守府初代長官



日露戦争中の明治38年(1905年)1月、旅順陥落後、旅順口鎮守府の初代長官に任命されました。着底した軍艦の撤去や機雷除去など、多くの困難を伴う任務でしたが、柴山の事務処理能力が評価された結果でした。

大将への昇進と晩年



旅順口鎮守府での功績が認められ、明治38年(1905年)11月には大将に昇進します。明治40年(1907年)に予備役となり、大正9年(1920年)に退役。その後は海軍とは関わりを持たず、静かに余生を過ごしました。没後、正二位に叙せられました。

家族と栄典



柴山は、薩摩藩藩医を父に持ち、東郷平八郎の叔母を祖母に持つ家系に生まれました。兄弟には、寺田屋事件に連座した兄もいました。妻は男爵本田親雄の長女、子には海軍軍人となった息子もいます。

数々の栄典、勲章、外国勲章を授与されており、その功績は高く評価されています。多磨霊園に埋葬され、その生涯は、水雷開発から日露戦争における貢献、そして海軍内部の複雑な人間関係まで、日本の近代海軍史を語る上で欠かせない人物の一人として記憶されています。

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