柴朴湯

柴朴湯（さいぼくとう）は、漢方医学において用いられる処方の一つであり、小柴胡湯（しょうさいことう）と半夏厚朴湯（はんげこうぼくとう）という二つの処方を合わせたものです。そのため、小柴胡湯合半夏厚朴湯（しょうさいことうごうはんげこうぼくとう）とも呼ばれます。

効果・効能

柴朴湯は、気滞（きたい）と呼ばれる状態に効果を発揮します。気滞とは、体内の気の巡りが滞っている状態を指し、のどの不快感、胸部の圧迫感、脇腹の痛みなど、様々な症状を引き起こす原因となります。柴朴湯は、小柴胡湯と半夏厚朴湯という、いずれも気滞に効果のある処方を組み合わせることで、これらの症状を幅広くカバーできるのが特徴です。

具体的には、体力中程度の人が、のどや食道の異物感、慢性の咳による息苦しさ、去痰などの症状に悩まされている場合に有効です。また、気管支喘息による胸部の不快感を和らげる補助的な役割も期待できます。

気滞に効果のある他の合方としては、小柴胡湯と香蘇散（こうそさん）を合わせた柴蘇飲（さいそいん）があります。また、小柴胡湯と五苓散（ごれいさん）を合わせた柴苓湯（さいれいとう）は、中国の明の時代に著された『万病回春』を出典としていますが、柴朴湯と柴蘇飲は、『本朝経験方（ほんちょうけいけんほう）』、すなわち日本で経験的に用いられてきた処方であることが特徴です。

組成

柴朴湯は、以下の生薬で構成されています。

柴胡（さいこ）: 7
半夏（はんげ）: 5-8
生姜（しょうきょう）: 1-2（ヒネショウガを使用する場合は3-4）
黄芩（おうごん）: 3
大棗（たいそう）: 3
人参（にんじん）: 3
甘草（かんぞう）: 2
茯苓（ぶくりょう）: 4-5
厚朴（こうぼく）: 3
蘇葉（そよう）: 2-3

副作用

柴朴湯の服用により、まれに胃の不快感、膀胱炎様の症状、発疹・発赤・かゆみなどの副作用が現れることがあります。重篤な副作用としては、間質性肺炎や、甘草に含まれる成分による偽性アルドステロン症などが報告されています。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

製薬会社

柴朴湯は、ツムラやクラシエなどの製薬会社から販売されており、日本の公的医療保険制度の適用を受けることができます。医療機関で処方してもらうか、薬局・ドラッグストアで購入することができます。

参考文献

* 田中耕一郎『生薬と漢方薬の事典』日本文芸社、2020年、203頁。ISBN 978-4-537-21780-3。

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