柴田承桂

柴田承桂

柴田承桂（しばた しょうけい、1850年6月21日 - 1910年8月2日）は、明治期に活躍した日本の化学者、薬学者です。漢方医の家に生まれましたが、医学ではなく化学、薬学の道を選び、日本の近代薬学の発展に大きく貢献しました。柴田桂太、雄次の父であり、徳永重康は娘婿にあたります。

生い立ちと留学

柴田承桂は、嘉永3年（1850年）に漢方医の永坂周二の次男として名古屋に生まれました。兄には漢詩人・書家の永坂石埭がいます。その後、尾張藩医であった柴田承慶の養子となり柴田家を継ぎましたが、医師の道ではなく、当時最先端の学問であった化学、薬学に興味を持ち、研究者の道に進みました。

明治2年（1869年）には、尾張藩の貢進生として選ばれ、その2年後には文部省の命令でドイツに留学しました。ベルリン大学では、有機化学の権威であったホフマン教授の下で学び、その後、ミュンヘン大学では薬学・衛生学の権威であったペッテンコーファー教授の下で学びました。留学期間中、彼は最先端の化学、薬学の知識を吸収し、その後の研究活動の礎を築きました。

帰国後の活動

明治7年（1874年）に帰国した柴田承桂は、東京医学校（現在の東京大学医学部）の初代製薬学科教授に就任しました。この時、日本における薬学教育の基礎を築き、多くの人材を育成しました。また、百科全書の翻訳事業にも参加し、「地質学」「果園篇」「太古史」の翻訳を担当しました。

その後、文部省衛生局司薬監督、東京・大阪両司薬場長を歴任しましたが、病気がちであったために退官しました。退官後は、著述活動に専念しました。明治19年（1886年）に制定された日本薬局方、および明治24年（1891年）の改正日本薬局方の編纂にも携わり、日本の薬学の標準化に貢献しました。明治36年（1903年）には、薬学博士の学位を取得しました。

晩年

柴田承桂は、晩年胃癌を患い、明治43年（1910年）8月2日に自宅で亡くなりました。享年61歳でした。墓は東京都新宿区の幸国寺と、名古屋市千種区の大法寺に分骨されています。

著作

柴田承桂は、翻訳を含め多数の著作を残しました。以下に代表的な著作を挙げます。

ファルク著、柴田承桂訳『普魯士学校規則』(1877年)
柴田承桂訳編『衛生概論』(1879-1882年)
飯盛挺造編、丹波敬三、柴田承桂校補『物理学』(1879-1882年)
ノイバウヱル著、下山順一郎訳、柴田承桂校補『検尿法』(1881年)
フリードリヒ・サンデル、柴田承桂訳、長與專齋校閲『公衆衛生論』(1882年)
丹波敬三、柴田承桂編、高松数馬補『普通動物学』(1883年)
伊藤謙著、柴田承桂、村井純之助校補『薬品名彙』(1883年)
伊勢錠五郎、柴田承桂編『臨床薬説』(1884年)
熊沢善庵、柴田承桂編『普通金石学』(1885年)
高橋秀松、柴田承桂編、生田秀校補『飲料水』(1887年)
樫村清徳、伊勢錠五郎編、柴田承桂補『日本薬局方随伴』(1887年)
コルネット著、柴田承桂訳『肺労伝染予防論』(1891年)
山田董著、柴田承桂補訂『無機化学粋』(1906年)
下山順一郎編、柴田承桂訂『薬用植物学』(1910年)

まとめ

柴田承桂は、日本の薬学の黎明期において、教育、研究、政策立案と多岐にわたり貢献しました。彼の功績は、今日の日本の薬学の発展に不可欠なものであったと言えるでしょう。

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