下山順一郎

下山順一郎

下山順一郎（しもやま じゅんいちろう）は、嘉永6年2月18日（1853年3月27日）に生まれ、明治45年（1912年）2月12日に没した、明治時代の日本の薬学者です。彼は、薬学博士第1号であり、日本薬剤師会第2代会長、私立薬学校（現：東京薬科大学）初代校長を務めました。日本の薬学界の発展に多大な貢献をした人物として知られています。

生い立ちと初期の教育

下山順一郎は、尾張国犬山藩（現在の愛知県犬山市）の藩士である下山健治と、その妻よしの長男として生まれました。幼名は忠興。藩校「敬道館」で漢学と本草学を学び、若くして学問の基礎を築きました。

大学進学と薬学の道へ

明治3年（1870年）10月、犬山藩の貢進生として選ばれ、神田一ツ橋の大学南校に入学。獨二之部（ドイツ語科）でドイツ語を学びました。その後、明治6年（1873年）9月には、第一大学区医学校（現在の東京大学医学部）製薬学科に進学。明治11年（1879年）3月、第一回生として首席で卒業し、翌年には製薬士の学位を取得しました。

軍と大学での活躍

卒業後、下山は陸軍薬剤官と大学助教授を兼任しました。明治16年（1883年）には日本薬局方編纂御用掛に任命されましたが、その後、ドイツのシュトラスブルク大学に留学し、フルキーゲルの下で薬学の研究に励みました。

帰国後の貢献

明治20年（1887年）6月に帰国した下山は、陸軍一等薬剤官に任官し、帝国大学医科大学（現在の東京大学医学部）の生薬学講座初代教授に就任。生薬学の基礎を確立し、後進の育成に尽力しました。また、明治21年（1888年）8月には東京薬剤師会初代会頭に就任。同年11月には私立薬学校（後の東京薬学校、現在の東京薬科大学）の初代校長に就任し、医薬分業の重要性を説きました。

その他の役職と活動

下山は、明治23年（1890年）5月には第1回薬剤師試験委員に委嘱され、明治25年（1892年）にはロシア政府より同国博物館名誉会員に選ばれました。また、明治26年（1893年）にはフィラデルフィア薬科大学名誉教授にも選ばれています。明治31年（1898年）には正五位に叙せられ、六等瑞宝章を受章。明治32年（1899年）には薬学博士の第1号学位を取得し、五等瑞宝章を受章しました。さらに、薬局方編集委員や調査委員、日本薬剤師会会長なども歴任しました。

台湾での活動と薬草園の開設

明治33年（1900年）、台湾総督府の委嘱により台湾の薬業を視察し、特産の樟脳油の研究開発に貢献しました。明治36年（1903年）には、欧州各国の薬学視察を命じられています。明治40年（1907年）には、私財を投じて大規模な薬草園「是好薬園」を開設。和洋多種の薬用植物栽培に力を注ぎました。

死去とその後

下山順一郎は、明治45年（1912年）2月12日に58歳で亡くなりました。墓所は東京都墨田区の常泉寺にあります。没後、下山が栽培していた薬用植物は、四男の下山忠廉によって埼玉県に移され、その後、国の研究機関へと引き継がれました。また、下山の功績を称え、東京大学薬学部や東京薬科大学、愛知県犬山市などに胸像が建立されています。

親族と栄典

下山の親族には、医学者の高木繁、生理学者で参議院議員の高木健太郎がいます。また、下山は、1900年（明治33年）に勲四等瑞宝章、1903年（明治36年）に勲三等瑞宝章、1910年（明治43年）に勲二等瑞宝章を受章し、没後には従三位旭日重光章が追贈されました。

著作

下山は、多くの薬学に関する著書を執筆しています。主な著書には、丹波敬三との共著『無機化学 前後編』や、『有機化学 前後編』、柴田承桂との共著『検尿法』、『生薬学』、『薬用植物学-全』などがあります。

下山順一郎は、明治期の薬学の発展に大きく貢献した偉大な薬学者であり、その功績は今日でも高く評価されています。

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