貢進生

貢進生とは

貢進生（こうしんせい）とは、1870年（明治3年）に各藩からの推薦を受けて大学南校に入学した生徒のことを指します。この制度は、旧米沢[[藩]]出身の平田東助と旧飫肥藩出身の小倉処平の建議により、太政官布告によって定められました。各藩は、石高に応じて1名から3名の人材を大学南校に送り込むことが義務付けられました。大学南校は、明治政府が洋学を教授するために設置した教育機関であり、後の開成学校、そして東京大学（旧制）へと発展していく重要な機関でした。

貢進生の総数は318名で、年齢は16歳から20歳とされていましたが、例外もありました。当時、初等・中等教育機関が十分に整備されていなかったため、大学南校（後の開成学校）は、初等教育から中等教育を行い、徐々に外国語や専門教育を施す役割を担いました。

学習内容

貢進生は、学ぶべき洋学の国籍に応じて英語・フランス語・ドイツ語のいずれかのコースに分かれ、外国語の習得から学習を始めました。1871年（明治4年）の時点では、英語が219名、フランス語が74名、ドイツ語が17名となっており、英語を選択する学生が最も多かったことがわかります。

大学南校の変遷と貢進生のその後

大学南校は、南校、第一大学区第一番中学、開成学校と名称を変えながら発展し、開成学校の段階から専門教育が開始されました。1877年（明治10年）に東京大学（旧制）が設立されると、貢進生はその第一期生として卒業生を輩出しました。しかし、最優秀生の中には、東京大学（旧制）の卒業を待たずに、海外留学に派遣された者もいます。

また、フランス語を学んだ学生の一部は、司法省法学校に転じたり、他の高等教育機関に転校したりしました。中には、卒業を待たずに政府に出仕した者もいます。しかし、各藩からの推薦に問題があったケースも多く、貢進生のうち半数近くが学校を退学・脱落していきました。

貢進生の意義

貢進生は、明治初期の日本において、西洋近代の学問を組織的に学んだ第一世代です。彼らは、帝国大学成立時に教授陣の中心を占めるなど、明治中期以降の日本のアカデミズムにおいて中心的な役割を果たしました。彼らの存在は、日本の近代化において非常に重要な意味を持つと言えるでしょう。

主な出身者

以下に、貢進生の中から特に著名な人物を分野ごとにご紹介します。

第1回（明治8年）文部省派遣海外留学生

鳩山和夫（エール大学）
小村寿太郎（ハーバード大学）
斎藤修一郎（ボストン大学）
松井直吉（コロンビア大学）
南部球吾（コロンビア大学）
原口要（レンセラー工科大学）
平井晴二郎（レンセラー工科大学）
菊池武夫（ボストン大学）
長谷川芳之助（コロンビア大学）
古市公威（エコール・サントラル・パリ）
安東清人

第2回（明治9年）文部省派遣海外留学生

穂積陳重（ベルリン大学）
岡村輝彦（ミドルテンプル法曹院）
杉浦重剛
桜井錠二
関谷清景（ロンドン大学）
谷口直貞（グラスゴー大学）
沖野忠雄（エコール・サントラル・パリ）
増田礼作（グラスゴー大学）
山口半六
向坂兌（ミドルテンプル法曹院）

第3回（明治11年）文部省派遣海外留学生

高松豊吉
河上謹一
石黒五十二
寺尾寿

第4回（明治11年）文部省派遣海外留学生

小藤文次郎
和田垣謙三
難波正
小金井良精
九里龍作
緒方正規

司法省法学校－司法省官費留学（明治8年）生

木下広次（パリ大学）
井上正一（パリ大学）

司法省法学校卒業（明治9年）生 司法省官費留学（明治9年）生

宮城浩蔵（パリ大学－リヨン大学）
小倉久（パリ大学）
岸本辰雄（パリ大学）

司法省出仕他

加太邦憲
大島誠治
一瀬勇三郎
矢代操 など

東京大学成立以前の政府出仕・卒業・退学・その他の学校卒業者

井上毅
伊沢修二
石本新六（フォンテンブロー砲工校）
園田孝吉
高平小五郎
永井久一郎
中川元
松村任三
村岡範為馳
和田維四郎
巌谷立太郎
中村弥六
柴田承桂
村田惇
谷沢竜蔵
青木保
小島好問 など

東京大学卒業・退学者

久原躬弦
下山順一郎
高橋健三
高橋順太郎
中村恭平
櫻井房記
信谷定爾
谷田部梅吉
千本福隆
高野瀬宗則
小林有也
林忠正
磯野計
弘田長 など

参考文献

唐澤富太郎『貢進生』（ぎょうせい、1974年）
「飫肥城歴史資料館紀要・読み物編第2集　飫肥西郷と呼ばれた男　小倉処平」（平成29年（2017年）、飫肥城下保存会）
清水唯一朗『近代日本の官僚』（中央公論新社、2013年）
「司法省法学校小史」（手塚豊著 『手塚豊著作集 9 明治法学教育史の研究』 慶応通信、1988年3月、ISBN 4766403851）

関連項目

大学校 (1869年)
開成学校
東京大学（旧制）
* 司法省法学校

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