柴田敬

柴田敬の生涯と業績

柴田敬（しばた けい、1902年9月2日 - 1986年5月22日）は、日本の経済学者であり、数理マルクス経済学の先駆者として知られています。彼は京都大学や山口大学、青山学院大学で教授として教鞭をとり、マルクスやベーム＝バヴェルクに対する理論的批判で高い評価を受けました。

経歴

柴田は福岡県福岡市に生まれ、福岡商業学校と山口高等商業学校を卒業後、京都帝国大学経済学部に進学しました。大学では河上肇のゼミに参加し、マルクス経済学を学びました。さらに、先輩の高田保馬からはローザンヌ学派の研究に触れています。1945年には学位論文『理論経済学』を提出し、経済学博士号を取得。帰国後、京都帝国大学の教授に昇進しました。

柴田はまた、1936年にハーバード大学に留学し、ヨーゼフ・シュンペーターのゼミに参加しました。この時、彼はシュンペーターから高い評価を受け、帰国時には吉田茂の仲介でケインズとも面会しています。これにより、彼は日本人経済学者として唯一、ケインズと議論を交わしたとされています。帰国後は経済ブレインとして近衛文麿の経済体制革新運動に関与しましたが、戦後はGHQによって公職追放の対象となりました。

戦後の活動

1951年に公職追放が解除されると、山口大学で教授としてのキャリアを再開し、経済学部長も務めました。1963年には山口大学を退任し、青山学院大学の教授に就任。その後も経済学部長として在任した後、1976年に退任しました。1986年にはその生涯を閉じました。

研究内容と業績

柴田敬の研究において特に注目されるのは、マルクス経済学とレオン・ワルラスの一般均衡理論の統合です。彼は1935年に発表した『理論経済学』において、資本家が生産費を低下させる新しい技術を導入した場合、平均利潤率は上昇するとの理論を展開しました。この考え方は、従来のマルクスの利潤率の低下に関する法則に対する重要な批判となり、柴田の名を広める要因となりました。彼の理論は、特にポーランドの経済学者オスカル・ランゲに評価されています。

柴田の研究によって生まれた「シバタ・オキシオの定理」は、資本の有機的構成と利潤率の関係を示したもので、特に生産係数の変化が利潤率に与える影響を考察しました。彼の結論は、技術進歩によって利潤率が下がるのではなく、むしろ上昇するとするもので、根岸隆の研究で一般化されることとなります。

評価と影響

柴田の業績は長らく「忘れられた大経済学者」とされていましたが、近年ではその重要性が再評価されています。都留重人は、彼を「経済学者」として高く評価し、柴田が国際的な経済学の舞台で独自の視点を持っていたことを強調しました。根岸隆も、彼が日本の最初の国際的なレベルの経済学者であったと述べています。

絶え間なく進化する経済学の分野において、柴田敬の理論は現代の経済的課題にも適用できるものであり、今後も多くの研究者に影響を与え続けることでしょう。彼の革新的な見解と研究方法は、数理マルクス経済学の発展に寄与し、経済学界における重要な位置を占めるものとなっています。

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