柴真揚流

柴真揚流（しばしんようりゅう）

柴真揚流は、日本の柔術に属する流派の一つで、独自の技術と哲学を有しています。1560年代に創始されたこの流派は、遠州（現在の浜松市）の藤田銀八郎によって始まり、彼の流派である柴新流が阿波国の矢田一心斎によって改革されたことからその名がつけられました。

歴史的背景

柴真揚流の歴史は、藤田銀八郎の教えを引き継ぐ矢田鉄之助にまでさかのぼります。藤田は、井上河内守の目付役を務めながら、柔術を学んでいました。一方、矢田一心斎は、天神真楊流や神之楊心流などを学んだ後に遠州浜松で藤田の指導を受け、柴新流を学びました。

矢田はこれらの流派の優れた点を組み合わせ、さらに独自の工夫を加えて柴真揚流を創始しました。この流派は豊富な技術体系を誇り、柔術、剣、棒、三道具、居合、長巻、鎖鎌、槍、捕縄など多岐にわたりますが、現在ではその多くが失伝しています。

流派においては、初心者は白色の鉢巻を、目録以上の免許取得者は黒色の鉢巻を締める掟があります。政治家の三木武吉なども柴真揚流の流派の弟子であったことが記録されており、彼の著書『三木武吉太閤記』では流派について触れられています。彼の言及によれば、双葉山定次を立浪部屋に入れた双川喜一も柴真揚流を研鑽しており、彼の成功は流派の教えによるものであると有名です。

教えの内容

柴真揚流には「武は四角三角なり」という教えが存在します。敵が四角に頑丈になっても、その一本を崩すことで他の三角も自然に崩れるという戦略的な考え方は、政治的策略としても用いられたとも言われています。

千人捕遠当術

柴真揚流は、特に独自の「千人捕遠当術」を伝承しており、これは他の流派には見られない技術です。四代目の渡辺監物が陸軍省に提供した際には、優れた効力を認められ感謝状を受けたという逸話があります。中山忠直の証言によれば、矢田一心斎が一揆の幹部30人を同時に捕えるためにこの術を使い、全員を倒した後に活法で蘇生させて連れ帰ったという伝説が残されています。

隠形の術

さらに、この流派には「隠形」という技術も存在します。隠形には黒隠と白隠の2つのバリエーションがあり、周囲に煙を広げて相手を無力化する仕組みです。使用者は煙から逃れるために薬物を使用することが特徴とされています。

系譜

柴真揚流は多くの弟子を持ち、その系譜は流祖の藤田銀八郎から始まり、様々な代を経て発展してきました。流派は切紙、目録、免許、免許皆伝という厳格な階級制度が設けられており、その中で多くの技法が継承されています。各代の名士たちがこの流派に名を連ねていることからも、柔術の重要な流派であることがわかります。

柴真揚流は、世代を超えて多くの武士や政治家に影響を与え、様々な武道や武芸の根幹に影響を及ぼしています。

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