栄 (エンジン)

栄エンジンの概要

栄（さかえ）は、日本の中島飛行機によって第二次世界大戦期に開発された航空機用の空冷星型エンジンです。このエンジンは、海軍では「栄」と名付けられ、陸軍では「ハ25」として採用されました。後に性能向上型としてハ105、ハ115が開発され、陸海軍の統合名称としてはハ35と呼ばれるようになりました。

栄エンジンは、複列14気筒の設計で、バルブ駆動方式はオーバーヘッドバルブ（OHV）を採用しています。さらに、遠心式過給器を搭載しており、優れた性能を発揮することができました。設計においては、中島飛行機がライセンス生産していたプラット・アンド・ホイットニー製エンジンからの影響を受けた部分も多く見られます。

主な搭載機

栄エンジンは、日本の代表的な戦闘機である零式艦上戦闘機や一式戦闘機「隼」などに搭載され、その性能と信頼性が高く評価されました。このエンジンは、合計で33,233基が製造され、様々な航空機に搭載されました。栄エンジンを基にして、18気筒化された「誉（ハ45）」も開発されています。

整備と教育

時代背景として、当時の日本ではエンジンに関するメーカー製のマニュアルが存在しない場合も多く、整備兵たちは現場の経験に頼ることが多かったといいます。しかし、栄エンジンは主力戦闘機に採用されたため、整備兵たちの間での知識共有が進み、整備が比較的安定して行われていました。また、栄エンジン自体が整備性に優れていたことも、信頼性を高める要因の一つとなりました。

ただし、継承された教育制度によりマニュアルが活用されにくいという傾向もありました。特に「誉」発動機の整備における問題も指摘されており、日本の整備教育に関しては改善が求められていたことが示唆されています。

主要諸元

栄エンジンにはいくつかの型式がありますが、主なものとして以下の型が存在します。

• - 栄一〇型
• - 栄二〇型
• - 栄三〇型

現存する栄エンジン

現在でも、栄エンジンの実物がいくつか存在しており、特に「零式艦上戦闘機」に搭載された栄エンジンは、日本の航空機エンジン史の中で重要な位置を占めています。このエンジンについては、多くの参考文献や資料が存在し、当時の整備技術や運用について研究されています。

参考文献

• - 中川良一・水谷総太郎『中島飛行機エンジン史』（酣灯社、1985年5月）
• - エイ出版社編集部『栄発動機二〇型取扱説明書 完全復刻版』
• - アジア歴史資料センター「九九式950馬力発動機説明書送付の件」

このように、栄エンジンは日本の航空歴史において、その性能と信頼性で特筆すべき存在であり、多くの航空機に搭載されていたことから、その影響は今もなお感じられます。

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