栖原角兵衛

栖原角兵衛（すはら かくべえ）とは

栖原角兵衛は、江戸時代中期から明治にかけて活躍した商人一族であり、その名は代々の当主によって受け継がれてきました。元々は北村姓を名乗り、源義家の末裔と伝えられていますが、一般には屋号である「栖原」の名で知られています。10代目角兵衛の時に正式に栖原姓に改めました。

栖原家のルーツと発展

栖原家の初代は、1615年（元和元年）に紀伊国有田郡吉川村から栖原村に移り住み、後にこの地名を屋号としました。当初は房総半島で漁業経営を行っていましたが、時代とともに事業を拡大していきます。

5代目角兵衛からは蝦夷地に進出し、北海道の開拓に深く関わるようになりました。その功績から、北海道神宮末社である開拓神社の祭神37柱にも名を連ねています。

栖原屋歴代当主

初代：1601年（慶長6年） - 1673年（寛文13年）
紀伊国から移住し、房総半島で漁業経営を開始。屋号「栖原」の基礎を築きました。

2代目：1644年（正保元年） - 1706年（宝永3年）
漁業経営に加え、元禄年間には江戸の深川で薪炭・木材問屋を始め、事業を拡大しました。

3代目：1685年（貞享2年） - 1734年（享保18年）
漁業から撤退し、木材取引を事業の中心に据えました。陸奥国下北の大畑村に支店を設け、桧山産の木材を扱うようになりました。

4代目：詳細不明。

5代目（茂勝）：1731年（享保16年） - 1793年（寛政5年）
1765年（明和2年）に松前藩に渡り、小松前町に支店を開設。漁業経営を再開するとともに、蝦夷と本州間の交易に携わりました。北海道進出の礎を築きました。

6代目（茂則）：1753年（宝暦3年） - 1817年（文化14年）
場所請負人として、テシホ、テウレ、ヤンゲシリ、トママイ、ルルモッペなどの地域を請け負いました。

7代目（信義）：1780年（安永9年） - 1851年（嘉永4年）
石狩13場所のうち5場所を一時的に請け負いましたが、後に返上。その後、根室場所を請け負うもこれも返上しました。しかし、伊達林右衛門と共同で請け負った北蝦夷地（樺太）の経営は1875年（明治8年）まで続けました。

8代目（茂信）：1808年（文化5年） - 1854年（嘉永7年）
伊達林右衛門とともに択捉島の漁場経営を請け負いました。

9代目（茂寿）：1812年（文化9年） - 1857年（安政4年）
松前藩の沖ノ口収納取扱方に就任しました。

10代目（寧幹）：1836年（天保7年） - 1918年（大正7年）
天塩、天売、焼尻、苫前、留萌が庄内藩領となった後も、引き続きその経営を任されました。1881年（明治14年）に北村から栖原に改姓しました。

栖原家の功績と影響

栖原角兵衛一族は、江戸時代から明治にかけて、漁業、木材取引、蝦夷地での交易など多岐にわたる事業を展開しました。特に北海道開拓においては、場所請負人として各地の経営を担い、地域の経済発展に大きく貢献しました。その功績は、北海道神宮末社の開拓神社に祀られていることからも伺えます。

栖原家の歴史は、日本の近世から近代への移行期における商人の活動を象徴するものであり、その足跡は現代においても重要な研究対象となっています。

参考文献

伊藤孝博『北海道「海」の人国記』無明舎出版、2008年7月30日。ISBN 978-4-89544-478-1。
田島佳也、「近世期～明治初期、北海道・樺太・千島の海で操業した紀州漁民・商人」『知多半島の歴史と現在(16) 』 2015年 19巻, 日本福祉大学知多半島総合研究所

関連リンク

* 栖原三郎兵衛

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