栗本尊子

栗本尊子：日本の声楽界を彩ったメゾソプラノ歌手

栗本尊子（くりもと たかこ）は、1920年5月9日に福岡県で生まれ、2019年1月22日に98歳で逝去した日本のメゾソプラノ声楽家、音楽教育者です。旧姓は小鳥居で、本名は栗本尊です。二期会名誉会員としても知られています。

経歴

福岡県太宰府市で、安楽寺五別当の小鳥居家の五女として誕生。福岡女学校を卒業後、1941年に東京音楽学校（現在の東京藝術大学）を卒業しました。声楽をリア・フォン・ヘッサートに師事し、その才能を開花させました。

1946年、長門美保歌劇団のプッチーニ『蝶々夫人』スズキ役でデビュー。その後、長門美保歌劇団で活躍し、1952年には二期会に参加。モーツァルトの『フィガロの結婚』ケルビーノ役や、『コジ・ファン・トゥッテ』をはじめ、リヒャルト・シュトラウスの『ばらの騎士』オクタヴィアン役、ビゼーの『カルメン』タイトルロール、ヨハン・シュトラウス2世の『こうもり』オルロフスキー公爵など、バロックから現代作品まで幅広い役柄を演じました。特に、山田耕筰『黒船』、團伊玖磨『聴耳頭巾』、清水脩『修禅寺物語』など、邦人作品の初演にも多く携わりました。

1953年には、藤原歌劇団のアメリカ公演に参加し、『蝶々夫人』で再びスズキ役を演じました。1956年には、NHKイタリア歌劇団のヴェルディ『アイーダ』に、日本側の若手歌手として参加。NHK交響楽団の『第九』ソリストを務めるなど、コンサートでも活躍しました。また、日本歌曲をライフワークとし、1977年からは日本歌曲のリサイタルを頻繁に開催しました。

教育活動と晩年

声楽家としての活動の傍ら、洗足学園大学教授として後進の指導にも情熱を注ぎました。2002年には紀尾井ホールでの「グレート・マスターズ」公演に出演。2006年には、長年の演奏活動の集大成となる初のCD『愛と祈り〜歌いつがれる日本のうた』をリリース。2012年には、自叙伝的な書籍付きCD『奇蹟の歌』を発表しました。

その歌声は、畑中良輔に「日本音楽界の奇跡」と称賛され、日本歌曲の作詞者や作曲者の思いを深く表現し、言葉の美しさと感情表現によって、「形のない美しき芸術品」として日本歌曲の真髄を体現しました。

2010年には母校である福岡女学院の創立125周年記念式典で歌声を披露し、2012年には92歳で銀座ヤマハホールにてコンサートを開催。年齢を感じさせないその歌声は、聴衆に驚きと感動を与えました。このコンサートの模様はDVD/BD化されています。

受賞歴と家族

2013年には新日鉄住金音楽賞特別賞、2017年には文化庁長官表彰を受賞。

夫は声楽家（バス・バリトン）の栗本正、長男は日本石油輸送株式会社の元代表取締役社長、代表取締役会長の栗本透です。

ディスコグラフィー

CD
愛と祈り－歌いつがれる日本のうた (2006年発売/カメラータ・トウキョウ)
グレート・ヴォイス - 2005 Live in Tokyo (2008年発売/カメラータ・トウキョウ)
奇蹟の歌（書籍付きCD） (2012年発売/カメラータ・トウキョウ)
DVD/BD
栗本尊子コンサート in ヤマハホール (2013年発売/カメラータ・トウキョウ)

栗本尊子は、その卓越した歌唱力と豊かな表現力で、日本の声楽界に多大な貢献をした偉大な声楽家です。

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