株仲間

株仲間とは

株仲間とは、江戸時代に同業の商人たちが形成した、一種のカルテル組織です。主に問屋が中心となり、仲間内で株式を共有することで構成員としての権利を得ていました。この組織は、商品の流通を独占し、価格を操作する力を持っていました。

株仲間の成立と変遷

当初、江戸幕府は株仲間を私的な集団とみなし、その力を警戒していました。楽市・楽座の政策を継承していた幕府は、株仲間が流通機構を支配し、幕府の権威を脅かす存在になることを恐れ、1648年から1670年にかけて、何度も株仲間を禁止する法令を出しました。

しかし、享保の改革において、幕府は商業統制のために株仲間を組織化する方針に転換しました。株仲間は幕府に冥加金（上納金）を納めることで公認され、販売権の独占などの特権を得ました。田沼意次時代には、幕府の財政収入を増やすとともに商人統制を図るため、株仲間の公認がさらに積極的に進められました。

自主的に結成された株仲間は「願株」、幕府の命令によって結成された株仲間は「御免株」と呼ばれました。一般的に、株仲間の公認とは、願株の公認を指します。

株仲間の解散と再興

天保の改革を進めた水野忠邦は、株仲間による流通の独占が物価高騰の原因であると考え、1841年から1842年にかけて、冥加金の徴収を停止し、株仲間を解散させました。しかし、当時の経済状況は、農村工業の発達や新興商人の台頭によって、株仲間の独占はすでに形骸化していました。また、株仲間は、代金不払いなどの不正を行った仲買の情報を共有し、仲間内の商取引を停止するなどの制裁を加えることで、債権と契約の履行を保証する役割も担っていました。しかし、幕府はこうした実態を理解しておらず、株仲間を解散させれば流通が円滑に進むという誤解に基づいていました。その結果、流通は混乱し、かえって景気は悪化しました。

この政策に反対した町奉行の矢部定謙は、改易となり、憤死しています。

その後、水野忠邦が失脚すると、1846年に筒井政憲が株仲間の再興を提案し、1851年に遠山景元によって冥加金不要の問屋仲間として再興されました。1857年には再び株仲間となりました。再興後には株数が増やされ、新興商人を取り込もうとする動きも見られました。

明治維新と株仲間の終焉

明治維新後の1872年、株仲間は再び解散を命じられ、以降復活することはありませんでした。株仲間の構成員の多くは、商業組合に改組されました。

株仲間の現代への影響

日本相撲協会の年寄名跡は「年寄株」とも呼ばれますが、その原型は江戸時代に形成された株仲間です。年寄制度は、現在も税制上の優遇措置を受けることができる公益財団法人として存続しています。しかし、数々の問題を抱えながらも、その制度は現代にも影響を与え続けています。

株仲間は、江戸時代の経済や社会構造を理解する上で重要な組織です。その歴史は、経済政策や社会の変化が、どのように人々の生活や組織に影響を与えるかを考える上で、貴重な教訓を与えてくれます。


参考文献
『株仲間』 - コトバンク

関連項目
株仲間解散令
* 株仲間再興令

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