根本敬 (ビルマ研究家)

根本敬氏は、1957年生まれのビルマ（現ミャンマー）近現代史研究者であり、上智大学名誉教授です。

経歴

東京都立秋川高等学校を卒業後、国際基督教大学（ICU）に進学し、社会科学科で学びました。卒業後、東京都立富士森高等学校で社会科（世界史）の教員として勤務。その後、母校である国際基督教大学大学院の比較文化研究科博士前期課程に進み、文学修士の学位を取得しました。大学院在籍中には、文部省の派遣留学生として約2年間、ビルマ連邦社会主義共和国に滞在し、現地での研究を深めました。帰国後、ICU大学院博士後期課程に進学しましたが、後に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の助手に転じ、研究者としてのキャリアを本格的にスタートさせます。同研究所では助教授、教授と昇任し、この間にはロンドン大学東洋アフリカ研究学院（SOAS）で訪問研究員として研究交流も行いました。2007年には上智大学へ移り、外国語学部、そして新設された総合グローバル学部の教授として教育・研究活動を続けました。2023年に定年退職を迎え、現在は上智大学名誉教授の称号を得ています。また、1990年から現在まで30年以上にわたり、国際基督教大学で非常勤講師として「東南アジア史」の授業を担当し、多くの学生を指導しています。

研究分野と主な業績

根本氏の研究の中心は、ビルマの近代から現代にかけての歴史です。特に、植民地支配下でのナショナリズムの勃起、独立運動の過程、独立後の国家建設の試みとその挫折、そして現代に至る政治状況の変遷に深く切り込んでいます。アウン・サン将軍やバ・モオ博士といった独立運動の指導者、そしてアウンサンスーチー氏に代表される民主化運動のリーダーたちの思想や行動にも詳細な分析を加えています。

その研究成果は、数多くの重要な著作として結実しています。代表的な単著としては、『アウン・サン 封印された独立ビルマの夢』（岩波書店）、『抵抗と協力のはざま 近代ビルマ史のなかのイギリスと日本』（岩波書店）、『物語ビルマの歴史 王朝時代から現代まで』（中公新書）、『アウンサンスーチーのビルマ 民主化と国民和解への道』（岩波書店）などがあり、これらの著作を通じて、複雑なビルマ現代史の理解を深めるための貴重な視点を提供しています。直近では『つながるビルマ、つなげるビルマ：光と影と幻と』（彩流社）を刊行し、ビルマの多様な側面を探求しています。

また、単著の他にも、共編著や多数の学術雑誌への寄稿、岩波講座などの主要な歴史シリーズにおける執筆を通じて、ビルマ研究の裾野を広げ、その成果を広く共有しています。例えば、『写真記録東南アジア 歴史・戦争・日本 4 ビルマ(ミャンマー)・タイ』（ほるぷ出版）や、『暮らしがわかるアジア読本 ビルマ』（河出書房新社）といった一般向けの著作にも携わり、専門知識を分かりやすく伝える努力も行っています。さらに、東南アジア史やナショナリズムに関する国際的な共同研究にも積極的に参加し、その成果を国内外に発信しています。

根本氏の長年にわたる研究活動は、ビルマ（ミャンマー）という国の歴史と現状を理解する上で欠かせない貢献となっています。特に、一次史料に基づいた緻密な実証研究と、その背景にある社会・文化的な文脈への深い洞察は、多くの研究者や学生に影響を与えています。

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