桂吉の丞

桂吉の丞：上方落語界を彩る実力派

1982年7月31日、大阪府堺市に生まれた桂吉の丞は、米朝事務所所属の上方落語家です。本名、飯村隆祥。尼崎市を拠点に活動し、力強い芸風と独特の存在感で多くのファンを魅了しています。出囃子は『酔猩々』。

吉の丞の経歴は、決して順風満帆ではありませんでした。落語家になる前は、鳶職として大阪市都市環境局舞洲スラッジセンター建設などにも携わっていたという、意外な過去を持っています。その経験が、現在の芸風にも影響を与えているのかもしれません。

2002年8月13日、桂吉朝に入門。吉朝師匠は吉の丞にとって最後の弟子となりました。2003年3月、太融寺での「吉朝学習塾」で初舞台を踏みます。その後、地道な努力を重ね、2009年には繁昌亭大賞輝き賞を受賞。2015年には第1回上方落語若手噺家グランプリという栄誉にも輝き、2021年には第76回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞を受賞するなど、実力派落語家としての地位を確立しました。

彼の強面な容姿から、「米朝一門（もしくは吉朝一門）のヒットマン」と呼ばれることもある吉の丞ですが、その内面は意外に繊細です。2006年には大師匠である桂米朝宅で内弟子修行を行い、米朝師匠から「吉の丞はこわい…」と言われるほど厳しく鍛えられました。また、2006年8月には米朝師匠が入院した際、桂米左と共に身の回りの世話を務めるなど、師匠への深い尊敬と愛情を感じさせます。

入門志願の際、師匠の吉朝から「前科はないんか？」と尋ねられたエピソードや、2012年にはフルマラソンを完走したというエピソードなど、彼の個性あふれる一面を垣間見ることができます。

近年では、新型コロナウイルスの影響で仕事がキャンセルされるなど、厳しい状況もありました。2020年には、暇を持て余し、サラダパンを求めて高速往復7000円をかけて長浜まで行ったという、ユーモラスなエピソードも話題を呼びました。

メディアへの露出も増え、2022年からはKBS京都で『桂吉の丞のおつかれさん！』のメインパーソナリティを務めるなど、落語家としての活動の幅を広げています。ABCラジオの『吉弥・吉の丞の落語家の出番です！』では、桂吉弥とのコンビでパーソナリティを担当するなど、持ち前の明るさとユーモアでリスナーを魅了しています。

強面で一見怖い印象を与える桂吉の丞ですが、その芸風は力強く、かつ繊細。数々の受賞歴が示すように、確かな実力を持つ落語家です。彼の今後の活躍から目が離せません。ニューヨークに妹がいるという、意外な一面も持ち合わせています。これからも、上方落語界を代表する落語家として、ますますの活躍が期待されます。

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