桂吉朝

桂吉朝：上方落語界の若き星

1954年、大阪府堺市に生まれた桂吉朝は、上方落語界を代表する名優、桂米朝を師事した落語家です。5人兄弟の末っ子として印刷業を営む家庭で育ち、大阪府立今宮工業高等学校の落語研究会に所属。高校時代から『素人名人会』に出演するなど、早くから才能を開花させました。

米朝門下での修業と才能

高校卒業後は家業を手伝いながら、1974年、念願かなって3代目桂米朝に入門。米朝は吉朝の才能を見抜き、「東の旅・発端」を聞いただけで「教えることはない」とまで評したと言われています。入門当初から高い評価を得ていた吉朝は、同門の桂千朝、桂米八とともに米朝宅で3年間の厳しい修行生活を送りました。

米朝は、自身の芸について「枝雀には50教え、吉朝には100教えた」と語っており、吉朝への期待の大きさが伺えます。入門間もない頃から落語ファンから注目を集め、持ち前の才能と努力で着実に実力をつけました。

多様な才能と交流

吉朝は落語の枠にとらわれることなく、多様な活動に積極的に挑戦しました。桂千朝と組んで中田ダイマル・ラケットや宮川左近ショーの物まねを披露するなど、軽妙な芸で観客を魅了しました。また、中島らも率いる劇団「笑殺軍団リリパットアーミー」の役者としても活動。阪本順治監督の映画『王手』にも出演するなど、多方面で才能を発揮しました。

さらに、狂言師13世茂山千五郎らと「落言」という狂言と落語を融合させた新しいスタイルの公演を行うなど、落語にとどまらない幅広い活動を展開。文楽界の著名な方々とも親交が深く、文楽と落語のコラボレーション公演を開催するなど、異分野との交流にも積極的でした。また、弟子の桂米左とともに日本のアニメーションの元祖である「錦影絵」を演じるなど、常に新しい試みに挑戦し続けました。

後継者への期待と惜しまれる死

その才能と実力から、上方落語界の次世代を担うホープ、そして米朝の後継者として大きな期待が寄せられていました。しかし、1999年に胃がんを患い、手術後一度は復帰したものの、2004年に胃がんを再発。闘病生活を送りながらも高座に立ち続けましたが、2005年11月8日、心不全のため50歳の若さで亡くなりました。

最期の高座となった2005年10月27日の「米朝・吉朝の会」では、師匠である米朝が吉朝のたっての希望で「狸の賽」を口演。吉朝自身は「弱法師」を演じた後、力尽きました。その最期の高座は、観客に深い感動を与え、長く記憶に残ることとなりました。

多くの受賞歴と作品

吉朝は数々の賞を受賞しました。主な受賞歴には、「NHK新人演芸コンクール」優秀賞、「咲くやこの花賞」、「大阪府民劇場奨励賞」、「国立演芸場花形演芸会」金賞・大賞、「上方お笑い大賞」、「芸術選奨新人賞」、「兵庫県芸術奨励賞」などがあります。これらの受賞歴は、彼の高い実力と評価を証明しています。

彼の落語はCDやDVDとして残されており、後世に彼の芸を伝える貴重な資料となっています。また、彼の生涯を描いた書籍も出版されています。

弟子と遺産

吉朝は、米朝一門の伝統を受け継ぎ、弟子たちを育成しました。他の落語家一門とは異なり、大師匠である米朝宅に住み込みで内弟子修行をするのが慣例でした。

桂吉朝は、短い生涯でしたが、上方落語界に大きな足跡を残しました。彼の芸は、多くの人の心に深く刻まれ、これからも語り継がれていくことでしょう。彼の功績は、上方落語界の発展に大きく貢献しました。その才能と熱意は、多くの後進たちに大きな影響を与え続け、上方落語界の未来を照らし続けています。彼の死は、日本の芸能界に大きな損失をもたらしました。

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