桂歌之助 (2代目)

二代目 桂歌之助：類まれな才能と数奇な運命を辿った落語家

二代目桂歌之助(1946年7月30日-2002年1月2日)は、岡山県岡山市出身の落語家です。本名は北村和喜。幼少期から落語に親しみ、学生時代には桂米朝の熱心なファンでした。大学進学を志しましたが、落語家への道を志し、1967年7月、桂米朝に入門。桂扇朝を名乗り、1970年にトップホットシアターで初舞台を踏みました。

その後、幾多の困難や奇縁を経験しながら、落語家としての道を歩んでいきます。1974年1月には、歌之助を襲名。これは、落語会開催のたびに不幸な出来事が起こるという噂から、改名を決意したためです。香川登志緒氏の助言を受け、姓名判断に基づいて名付けられました。

歌之助は古典落語と新作落語の両方に精通し、端正な語り口と、時折見せる知的ユーモア、そして鋭い批評性が特徴でした。その芸風は多くのファンを魅了しました。晩年には橘ノ圓都に「寝床」を稽古してもらうなど、芸の研鑽にも励んでいました。

彼の代表的なネタの一つに「善光寺骨寄せ」があります。これは、自作の人形を操りながら演じるユニークな演目で、その人形は弟子である三代目歌之助に受け継がれています。また、新作落語として「ファミコン丁稚」も創作しており、ゲームの効果音を巧みに取り入れた斬新な作品でした。

歌之助は、落語家としての活動だけでなく、文筆活動にも携わっていました。また、師匠である桂米朝からは「歌やん」と呼ばれ、親しまれていました。人柄は真面目でしたが、酒を飲むと荒れる一面もあったと伝えられています。

特に印象的なのは、彼の落語会と不幸な出来事が重なったという奇縁です。天六ガス爆発事故、千日デパート火災、ホテルニュージャパン火災、日航機羽田沖墜落事故、コンコルド墜落事故など、数々の大きな事故と落語会の開催が重なったのです。そのため「不幸を呼ぶ男」「災害を呼ぶ男」という異名も付き、本人も自嘲気味に「恐怖の大王」と称していました。

1997年には三代目桂歌之助を弟子として迎え入れましたが、急性膵炎で入院。正式な入門は入院中に行われました。そして2001年9月、食道がんのため入院。余命3か月と宣告されたものの、病状が小康状態にあった10月には、院内で簡易の高座を作り、入院患者を相手に落語会を開きました。演目は「狸の賽」でした。

この時、お手伝いをしてくれた三代目歌之助に「今日はありがとう。あなたと縁ができたのは私の自慢です」と手紙を送っています。しかし、その後回復することなく、2002年1月2日に死去しました。享年57歳でした。息を引き取ったのは、師匠である桂米朝が大きな会場での独演会を最後にすると銘打った、サンケイホールでの独演会初日未明でした。

歌之助には実子がなく、唯一の弟子である三代目歌之助を可愛がったと伝えられています。中島らもの小説やかんべむさしの小説にもモデルとして登場するなど、その存在は多くの人の記憶に刻まれています。SF作家の堀晃とも親交があり、没後には堀晃が編集に加わった関連書籍も出版されています。

二代目桂歌之助は、数奇な運命を辿りながらも、独自の芸風で多くのファンを魅了した落語家でした。彼の残した作品や、数々の逸話は、これからも多くの人に語り継がれていくことでしょう。彼の生涯は、落語家としての才能、人としての魅力、そして運命のいたずらに翻弄された人生のドラマを凝縮した物語と言えるでしょう。

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