トップホットシアター

トップホットシアター：梅田の演芸場の歴史と華やかな面々

1969年4月、大阪市北区梅田の東宝OSMビル（HEP NAVIO隣接）に、演芸場『トップホットシアター』が開場しました。阪急阪神東宝グループのコマ・スタジアムが経営し、『コマ・モダン寄席』の看板を掲げていました。

この場所は、それ以前は東宝直営のヌード劇場『OSミュージックホール』でしたが、閉鎖後、改装を経てトップホットシアターとして生まれ変わりました。開場記念公演には、当時すでに参議院議員となっていた横山ノック氏が祝辞を述べるなど、華々しいスタートを切りました。

当初は、芦屋小雁氏を進行役に据え、彼の漫談を中心に、30分間のショーや軽演劇などを織り交ぜた構成でした。芦屋小雁氏の相手役として、コマ・ダンシングチームから選抜された8人組「トッピー・エイト」も活躍しました。出演芸人の斡旋は主に松竹芸能が行い、開場記念公演には、かしまし娘や中田ダイマル・ラケットといった人気芸人も出演しました。

その後、トップホットシアターは他の演芸場と同様の二部制公演（入れ替えなし）へと移行しました。出演者は、大宝芸能（後の大宝企画）所属の芸人を中心に、ケーエープロダクション、米朝事務所、和光プロダクションなどの芸人が多数出演。吉本興業や松竹芸能に属さない芸人が多くを占め、独自の勢力圏を築きました。

休憩時間には、松下電器産業とタイアップしたゲームコーナー「ナショナルヤングパーティー」や、協賛企業による観客参加型コント「爆笑パーティー」が開催され、客を楽しませました。そして、トリを飾るのは、近隣のうめだ花月に対抗する独自のコメディ作品『コマ新喜劇』でした。

しかし、テレビ中継設備が整っていなかったことから、テレビへの露出が少なく、集客面で苦戦を強いられることになります。劇場の舞台は横に広く、開場当初はヌード劇場の名残として中央に張り出し舞台があったと言われています。客席は二階席も存在しましたが、わずか二列のみでした。

盛況のうちに幕を開けたトップホットシアターでしたが、うめだ花月の隆盛もあり、営業成績は芳しくなく、1977年3月7日に閉鎖されました。その後、建物は東宝が経営するOSMビルとして存続していましたが、2012年12月以降の再開発事業に伴い、2016年8月に解体されました。

トップホットシアターには、漫才、落語、漫談、音楽ショー、演劇など、多様な演芸が繰り広げられました。夢路いとし・喜味こいし、秋田Aスケ・Bスケ、海原お浜・小浜など、多くの名だたる芸人が舞台に立ち、観客を魅了しました。落語家では、桂米朝、桂枝雀、桂ざこばなど、そうそうたる顔ぶれが出演しています。さらに、横山ホットブラザーズ、ぴんからトリオといった音楽グループも出演し、多様なエンターテインメントを提供しました。

『トップホットシアター』という名称は、「TOPHOT」つまり「東宝」に由来しています。この劇場で活躍した芸人たちのエピソードや、当時の演芸界の状況を知る上で、貴重な存在でした。閉鎖後も、その賑やかで華やかな舞台は、多くの人の記憶に刻み込まれています。

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