桑野通子

桑野通子： 昭和初期の銀幕を彩った悲劇の女優

桑野通子（くわの みちこ、1915年1月4日 - 1946年4月1日）は、昭和初期に一世を風靡した女優です。その美貌と才能は、多くの人々を魅了しましたが、31歳という若さで突然この世を去りました。彼女の短い生涯と、映画界に残した輝かしい足跡を振り返ります。

生い立ちとデビュー

桑野通子は、1915年に東京で生まれました。実家はトンカツ屋を営んでおり、比較的裕福な家庭で育ちました。幼少期に母親を亡くすという悲しい経験をしましたが、学業優秀で、三田高等女学校をトップクラスの成績で卒業。その後、森永製菓に入社し、初代スイートガールとして全国の百貨店などを巡り、販売促進の仕事をしていました。

1934年、桑野通子は赤坂溜池のダンスホール『フロリダ』でダンサーとして働いているところをスカウトされ、松竹に入社。同年11月公開の映画『金環蝕』で女優としてデビューを果たします。

スター女優への階段

デビュー後、桑野通子は瞬く間に人気女優の仲間入りを果たします。特に、1935年に入社した上原謙との「アイアイコンビ」は、多くのファンを魅了しました。小津安二郎、清水宏、島津保次郎など、日本を代表する名監督の作品に次々と出演し、その演技力が高く評価されました。

私生活と突然の死

桑野通子は、森永製菓の社員時代に知り合った斎藤芳太郎との間に娘をもうけます。しかし、斎藤には妻子がおり、複雑な関係でした。

1946年、溝口健二監督の映画「女性の勝利」に出演中、撮影中に体調を崩し、病院に搬送されました。診断の結果、子宮外妊娠による出血多量が原因で、そのまま帰らぬ人となりました。31歳という若さでした。

人柄とエピソード

桑野通子は、スイートガールやダンサーといった華やかな経歴から、奔放な女性だと思われがちでしたが、実際は寡黙で控えめな性格だったと言われています。一方で、自動車免許を取得し、銀座でダットサンを乗り回すなど、アクティブな一面も持っていました。松屋前で接触事故を起こしたというエピソードも残っています。

主な出演作品

金環蝕（1934年）
恋愛修学旅行（1934年）
東京の英雄（1935年）
彼と彼女と少年達（1935年）
感情山脈（1936年）
有りがたうさん（1936年）
家族会議（1936年）
男性対女性（1936年）
淑女は何を忘れたか（1937年）
恋も忘れて（1937年）
戸田家の兄妹（1941年）
女性の勝利（1946年）

桑野通子の遺産

桑野通子は、短い生涯でしたが、数多くの映画に出演し、その美貌と演技力で多くの人々を魅了しました。彼女の作品は、今もなお多くの人々に愛され、日本の映画史にその名を刻んでいます。彼女の早すぎる死は、映画界にとって大きな損失であり、多くの人々がその才能を惜しみました。しかし、彼女が残した作品は、永遠に輝き続けるでしょう。

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