桓玄

桓玄：簒奪された皇帝、その野望と終焉

桓玄（かん げん）は、東晋末期に短期間ながら皇帝の座についたものの、すぐに失脚した人物です。桓楚の初代皇帝として知られています。

生涯

桓玄は、東晋の重臣であった桓温の息子として生まれました。父の死後、桓玄は叔父の後見を受けながら成長し、若くして博学で知られるようになります。しかし、父が簒奪を企てた人物であったため、桓玄は一時官職を罷免されます。その後、地方官を歴任しますが、自身の境遇に不満を抱いていたとされています。

当時の東晋は、安帝を擁立した司馬道子父子による政治の壟断が深刻化しており、社会の不満が高まっていました。桓玄は、この状況を利用して勢力拡大を図ります。398年、王恭が司馬道子打倒の兵を挙げると、桓玄もこれに呼応。王恭の挙兵は失敗に終わりますが、桓玄はこれを機に江州刺史となり、勢力を拡大します。さらに、殷仲堪や楊佺期といったライバルを排除し、長江中流域を制圧しました。

399年、孫恩の乱が発生すると、桓玄は混乱に乗じて軍を率いて首都建康に迫ります。司馬道子父子は劉牢之に桓玄討伐を命じますが、劉牢之は桓玄に寝返り、建康は桓玄によって制圧されます。桓玄は司馬道子父子を殺害し、政治の実権を掌握しました。この際、公文書を竹簡や布から紙に統一したと伝えられています。

その後、桓玄は劉牢之から軍の実権を奪い、劉牢之は失意のうちに自殺。こうして東晋の実権を完全に掌握した桓玄は、403年12月、安帝から帝位を譲り受ける形で皇帝に即位し、国号を楚と定めました。

しかし、桓玄の皇帝としての期間は長くはありませんでした。わずか3ヶ月後の404年2月、劉裕が桓玄打倒のクーデターを起こします。桓玄は敗れて建康を脱出し、西へ逃れましたが、最終的には馮遷によって殺害されました。

評価

桓玄は、卓越した政治力と軍事力によって東晋の実権を掌握し、皇帝の座にまで上り詰めました。しかし、その簒奪は正当性を欠き、短期間で終わりを迎えました。桓玄の生涯は、東晋末期の混乱と権力闘争を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

桓玄の簒奪は、東晋の衰退を加速させ、後の南朝宋の成立を準備したとも言えるでしょう。彼の短い皇帝としての期間は、政治的な野心と時代の流れに翻弄された人物の悲劇を物語っています。

その他

桓玄の時代には、陶淵明が一時的に幕僚を務めていたことが知られています。

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